昨年12月下旬、JR長崎線の特急列車が乗客とのトラブル対応で30分遅れた。結果的に特急を含め計6本が遅れ、500人に影響が出た。「クレームで特急が30分も止まるのか」。佐賀新聞「こちら さがS編集局」(こちさが)に寄せられた疑問を検証した。
発端は昨年12月22日午後6時ごろ、鹿島市の肥前鹿島駅での出来事だった。乗客の一人が「列車内の浅くくぼんだカップホルダーにビールを置いていたら、列車の揺れかブレーキが原因でこぼれ、プレゼントがぬれた」と立腹したことが原因だった。乗客は酒を飲んでいたとみられる。
列車は車掌の合図がなければ出発できない。このとき車掌は1人で、乗客とのやり取りが長引き、JR九州は「降りてもらうしかない」と判断した。この乗客が肥前鹿島駅で降りる予定だったこともあり、駅員に引き継いだ。その後、複数の警察官が40分近く事情を聞いたり説得したりして、乗客は帰宅したという。
12月23日に紙面やウェブサイトで報じ、「Yahoo!ニュース」にも記事を配信したところ、900件近いコメントが寄せられた。「へこみだけのテーブルは一考の余地あり」「車掌の初期対応がまずかったのでは」といった書き込みもあったが、ほとんどは「悪質なクレーマー」「通常の揺れなら列車は悪くない」といったJR側を擁護する意見だった。
JR九州によると、電車を緊急で停車させるケースは、人身事故や車内で急病人が出た場合に加え、風雨などによる規制、列車の異常などがある。乗客とのトラブル絡みの停車については「少なくとも本年度は初めて。あまり聞かない」と広報担当者は話す。
社内規定では「特急は2時間以上遅れた場合、特急料金を払い戻す」と定めている。「今回のようなケースでも、仮に雨で1時間半遅れた場合でも対応は同じ」と説明し、30分の遅延では、乗車していた人たちへの払い戻しはないという。
ただ、2時間以上の遅れになれば、原因をつくった当事者に対して「賠償を求める可能性もある」と話す。踏切事故などで列車が破損するなど損害が出た場合にも、賠償を要求するケースがあるとしている。
今回の対応について広報担当者は「もし車内でさらに大きな騒ぎになっていたら、ほかの乗客に危害が及んだ恐れもある。駅員に引き渡すことが最善だった」と振り返りつつ「乗客の皆さんは目的地に時間通りに着きたかったと思う。ご迷惑をおかけした」と話している。(小部亮介)