これがトランプ時代4年間の米国の帰結なのだろう。

 バイデン次期米大統領の大統領選当選を認定する上下両院合同会議が進んでいた米議会議事堂に、トランプ大統領支持者が暴徒化して乱入、占拠する驚愕(きょうがく)の事態が起きた。衝突で犠牲者が出た上、爆発物も見つかった。

 議会は対立する意見を戦わせる場であるだけに、衝突はこれまでも起きてきた。ベトナム戦争中は反戦デモが連日議会周辺で起き、南北戦争期は奴隷制で対立する議員同士の乱闘事件も起きた。大統領暗殺未遂事件も起きている。

 しかし、大統領選の結果を認めないとの理由で、当選者の認定手続きが進む議事堂に乱入し妨害するという事態は前代未聞である。

 混乱の最大の責任はトランプ氏にある。この4年間、求心力を維持するため人種問題など国民の分断を常にあおってきた。大統領選でもバイデン氏非難にとどまらず、支持者らに決起行動を示唆。実際に武装集団による民主党州知事の拉致未遂事件も起きた。選挙後は証拠も挙げずに「不正選挙」と断定し、自らが敗北した州の幹部に結果を覆すよう圧力をかけた。

 議事堂乱入の直前には支持者集会で、議会に出向いて示威行動をしようと呼び掛けた。支持者をつなぎ留め退任後の影響力確保を狙ったものだろうが、議事堂乱入はトランプ氏が扇動した結果である。民主党議員らがトランプ氏の解任や弾劾、退任後の訴追を求めたのも理解できる。

 トランプ氏は責任追及の動きに慌ててか、支持者に帰宅を呼び掛け、バイデン氏当選を認め平和的政権移行を約束した。混乱を起こしておいて罪は逃れたいという身勝手さが透けて見える。

 議事堂乱入の衝撃を受けて、運輸長官、教育長官ら高官が次々と辞任を発表した。共和党上院議員らもトランプ氏とたもとを分かつと宣言した。だが、なぜもっと早く大統領をいさめなかったのか。権力を持つうちは褒めたたえ、退任が決まれば突き放すのでは無責任だろう。

 支持者排除の後、合同会議は徹夜で議事を進め、最後はペンス副大統領がバイデン氏の当選認定を宣言した。新型コロナウイルス禍での異例の開票も長時間にわたって各州担当者が粛々と進め、州政府や裁判所はトランプ氏の圧力に屈しなかった。米国の民主主義はぎりぎりのところで持ちこたえたと言えよう。

 5日にジョージア州で行われた上院議員決選投票では民主党が2議席を独占した。バイデン民主党はこれで大統領府、議会上下両院を握った。

 だが、議事堂乱入事件を教訓に、米国民や政治家が目を覚まし、健全さを取り戻すと楽観はできない。富の偏在や教育格差、人種や文化の対立、グローバル化の負の側面などが長く指摘されながらも、一向に解決に向かっていないのだ。

 12月のギャラップ社世論調査では、米国の向かう方向に満足しているとの回答は16%しかない。これでは怒りをたぎらせる人々が、トランプ氏をはじめとする扇動型政治家に操られ再び暴徒化する危機は消えない。

 それは米国だけの特殊事情ではない。世界中で政治の劣化が顕在化し中国型の強権主義が影響力を広げている。日本も含めて民主主義国は危機感を共有すべきだ。(共同通信・杉田弘毅)

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