新型コロナウイルスの感染拡大の勢いが止まらず、菅政権は首都圏の1都3県を対象に、緊急事態宣言を発令した。1日当たりの新規感染者が7千人を超えるという事態の深刻化を招いたのは、昨年来の対応が後手に回った大きな失政と言わざるを得ない。

 国民の不安が日増しに膨らむ中、危機克服へ態勢の立て直しは急務だ。菅義偉首相や都道府県知事ら政治リーダーに求められるのは、医療現場や、時短営業で苦境に立たされる飲食業などの声をくみ取り、危機感を共有し、柔軟かつスピード感を持って政策を打つ姿勢への転換である。同時に、科学的なデータや現状に関する情報を詳細に開示しながら、明確なメッセージを発信するリスクコミュニケーションに心掛けてもらいたい。

 感染者増が始まった昨年11月以降、浮かび上がったのは、政府、自治体、専門家や医療現場の現状認識のギャップだ。「国が決めること」「自治体の判断」と責任を押し付け合う、対話・連携不足も表面化、司令塔が不在だった。さらに、本来なら“平時”に準備しておかなければならない、最悪の事態を想定した医療体制の構築、新型コロナウイルス特別措置法改正や、「Go To」事業の一時停止の判断基準を巡る論議を怠る政治・行政のサボタージュも露呈した。

 医療体制については、コロナ以外の患者の受け入れ余地がなくなってきたとして、日本医師会は「既に崩壊」と指摘する。年末年始を返上して検査・治療に当たって疲弊する医療機関、高齢者施設などには、これまで以上の人的、予算的な手厚い支援が欠かせない。

 今回の緊急事態宣言は、首都圏に絞ったものの、医療が脆弱(ぜいじゃく)な県でも新規感染者数が過去最多を更新するケースが相次ぐ。昨年春の前回宣言とは異なり、飲食店の営業時間短縮の要請を柱とし、学校の一斉休校やイベントの全面自粛は見送る限定的なものになった。飲食店の時短営業を中心とした施策のみの場合、感染者数は2カ月後も現状とほぼ同水準にとどまるという専門家の分析もある一方で、期間は2月7日までとしている。対象も、内容も、期間も十分なのか、必要ならば果断に見直さなければならない。

 午後8時までの時短営業を要請された飲食業界の打撃は大きい。協力金の上限を4万円から6万円に引き上げるが、仕入れなど飲食店に関連する業種への支援も目配りすべきだろう。加えて15日に締め切られる持続化給付金、家賃支援給付金制度の延長も、早急な検討が不可欠だ。

 国会は18日に召集される。しかし、国家の危機である。とりわけ特措法改正は待ったなしの課題だ。国会を前倒しできないならば、召集までに与野党の協議を重ね、速やかに成立させるのが政治の使命ではないか。

 強制力はないとはいえ、民主主義社会で保障された「自由」という権利に、再び一定の制限が課せられることになった。ただ、私たちは「コロナ慣れ」していなかったのか、ここで振り返っておかなければいけない。うつらない、うつさないという努力は、実は自由の制限を最小限に抑えるのが目的と捉えるべきだ。

 政府も、行政も、国会も、そして私たちも、救える命を守る行動を徹底したい。(共同通信・橋詰邦弘)

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