2021年の世界は激動が予想され、新型コロナウイルス、地球温暖化をはじめ人類共通の課題に国際社会が協力して取り組めるかが問われる。世界を覆う対立と排除の論理を克服する努力が何よりも求められる。

 変化の最大要因は米国の政権交代だ。国内外で分断をあおったトランプ大統領に代わり、融和を訴えるバイデン次期大統領が今月20日、正式に就任する。米国は世界保健機関(WHO)や温暖化対策の「パリ協定」など多国間の枠組みで超大国の責任を果たすべきだ。

 「新冷戦」と呼ばれるほど悪化した米国と中国の対立は、引き続き世界を揺るがす火種だ。コロナ対策や経済、環境の分野で歩み寄りは期待できるが、香港や少数民族に対する抑圧、台湾や海洋権益を巡り、確執はさらに先鋭化しかねない。粘り強い対話が必要だ。

 22日には核兵器禁止条約が発効する。核兵器を違法とする初の国際規範だ。核保有国に軍縮を迫る強い圧力になる。オバマ前米政権が掲げた「核兵器なき世界」へ向け再スタートの年にしなければならない。

 「米国第一主義」を独善的に進めたトランプ氏は環太平洋連携協定(TPP)、パリ協定、イラン核合意、中距離核戦力(INF)廃棄条約、オープンスカイ(領空開放)条約など数々の枠組み離脱や、WHOなど国連機関脱退を打ち出し、混迷をもたらした。修復には時間がかかるが、より良い国際協力の仕組みを築く機会と捉えたい。

 核を巡る国際秩序は、北朝鮮、イランの核開発問題などで不安定化しており、立て直さなければ人類の未来が危うい。5年に1度の核拡散防止条約(NPT)再検討会議は昨年コロナ禍で延期され、今年8月に開かれる予定だ。日本は「唯一の戦争被爆国」として責務を果たすべきだ。

 トランプ氏は米朝首脳会談を計3回行い、北朝鮮の核実験や大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射実験は抑えたが、非核化は一向に進んでいない。バイデン氏はイラン核合意への復帰を視野に入れるが、イランが核関連施設でウランの濃縮度を引き上げ、冷や水を浴びせた。イランはこれ以上の強硬姿勢を自制しなければならない。2月5日に期限切れを迎える米国とロシアの新戦略兵器削減条約(新START)は、延長した上で包括的な交渉を進めてほしい。

 分断をあおり、憎悪をかき立てるポピュリズム(大衆迎合)や自国優先主義は先進国、途上国を問わず世界中で民主主義をむしばんでいる。中国やロシアの抑圧的な統治手法を、途上国が取り入れる動きも目立つ。格差や差別はコロナ禍によってさらに深刻化した。

 欧州統合の歴史に逆行する英国の欧州連合(EU)離脱は、移行期間が昨年末で終わり、離脱が完了した。欧州統合を支えてきたドイツのメルケル首相は9月の総選挙後に引退する。人権と民主主義の価値観を共有してきたEUは、東欧の一部で司法の独立や報道の自由が後退し、加盟国間の亀裂が深まっている。

 国連のグテレス事務総長は新年メッセージで「温暖化に取り組み、コロナ拡大を阻み、21年を癒やしの年にしよう。ウイルスからの癒やし。壊れた経済・社会の癒やし。分断の癒やし。地球の癒やしを始めよう」と呼び掛けた。各国の人々が応え、力を合わせてほしい。(共同通信・上村淳)

このエントリーをはてなブックマークに追加