2021年の日本経済は緩やかな景気回復が続きそうだが、新型コロナウイルスの感染がさらに深刻化すれば景気が再び悪化する恐れもある。感染防止と経済活動を両立させ、本格回復の軌道に乗せる年にしたい。

 20年は世界がコロナに揺さぶられた1年だった。日本経済は、19年10月の消費税増税で景気が失速した直後にコロナが追い打ちとなり、実質国内総生産(GDP)は20年4~6月期まで3四半期連続マイナス成長となった。7~9月期は回復したが、通年では大きな落ち込みになったと推定される。

 今年の国内景気も、コロナの感染状況に左右されるのは間違いない。大きな鍵を握るのがワクチンだ。ワクチンの普及の見通しや、海外で出現した複数の変異種に対する効果ははっきりしない。これらの要因次第で、景気は上下に振れると予想される。

 忘れてはならないのは、景気後退期に行われた消費税増税の後遺症だ。コロナ前から個人消費が急激に冷え込み、日本経済は不況に突入していた。ただでさえ経済が弱っていたことが、コロナ禍による景気悪化をより深刻なものにしている。

 政府は21年度の経済成長率を4・0%と見込んでいる。日本経済研究センターが集計した成長率の民間予測は3・42%だ。しかし、見掛けの成長率が高いだけで、いずれもGDPの水準は消費税増税前にもコロナ前にも届かない。

 仮に有効なワクチンが急速に普及して予測を上回る高成長を実現できた場合も、事情は変わらない。日本のGDPが元の水準に戻るのは、22年以降との見方が一般的だ。

 心配なのは、コロナの感染が国内外で爆発的に拡大する可能性だ。その場合、個人消費は一段と低迷し、企業の設備投資も抑制される。東京五輪・パラリンピックの開催も危うくなるだろう。世界景気が悪化すれば、日本の輸出も縮小する。日本経済が、再びマイナス成長に陥る恐れも出てくる。

 米中対立の行方も楽観できない。ただ、それが世界経済に与える影響は、コロナほどには大きくないと思われる。

 政府に求めたいのは、引き続きコロナの感染防止に全力を注ぎつつ、経済活動をできるだけ維持し、安定成長経路への復帰を目指すことだ。

 政府は近く、東京など1都3県に2回目の緊急事態宣言を発令する。経済への打撃を最小限に抑えるために、飲食店などに補償を含む手厚い支援策を望みたい。一方で、当面の間は、今月召集される通常国会で成立する見通しの第3次補正予算の効果を見守ることになろう。その後は、景気悪化の兆候が見えたら、速やかに追加対策を発動する構えが必要だ。

 景気を優先して経済活動の制限を避ければ、感染が拡大する上に景気も悪化する。経済活動の制限が厳しすぎれば、景気が悪化し、健康水準の低下や自殺の増加により死亡率が上昇する。政府はこの両極端の間の最適点を探りながら政策運営をしなければならない。

 日本や米国の株価が上昇し、過熱気味なのも懸念される。世界経済が正常化に向かう場合、各国当局が金融・財政政策の引き締めを急げば、株式市場が大きく動揺する恐れがある。「出口戦略」には慎重でなければならない。(共同通信・柳沼勇弥)

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