菅義偉首相は新型コロナウイルス感染拡大を受け、首都圏の1都3県を対象に2回目の緊急事態宣言発令の検討に入ると表明した。その理由は、首都圏では飲食の場で感染が拡大し、年末の人出が減らず正月も感染者が多かったためとした。

 だが年末年始の人出増は容易に予想できたはずだ。全国で1日の新規感染者が4千人を超え、知事から要請を受けて正月休み明けに発令検討を決めたのは明らかに後手だ。飲食店の時短営業強化を巡っても国と都の歩調の乱れで対応が遅れた。国と自治体はタッグを組み直し、コロナ収束へ背水の陣で当たるべきだ。

 首相は年末の記者会見で、都内の人出が多く「このままではさらなる感染拡大が避けられない」との認識を示したが、緊急事態宣言は出す状況にないとした。政府の対策分科会が求める飲食店の時短営業強化についても罰則や補償を盛り込むコロナ特別措置法改正が先との見解を示し、「静かな年末年始」を国民に要請するにとどまった。甘い状況判断だったと言われても仕方あるまい。

 その後、年末に1日の新規感染者が全国で4520人、東京都で1337人と過去最多を記録。年明けもほぼ毎日3千人を超え、首都圏で全国の半分を占める現状だ。特に東京は感染経路不明が6割で、そのほとんどは飲食の場での感染と専門家が指摘する。若い世代を中心に街中の人出を抑えられなかった点では自治体側にも不備がある。

 東京都などは飲食店に午後10時までの営業時間短縮を求めてきたが、さらなる短縮要請については「協力いただければいいが、現実は厳しい」(小池百合子都知事)と、営業補償や罰則を強化しなければ実効が上がらないとして見送っていた。

 これに関し首相は「時間短縮をした北海道、大阪は結果が出たが1都3県は感染者が減らない」と自治体の不備を指摘。1都3県知事が西村康稔経済再生担当相に宣言発令を要請した際も、逆に宣言に先立つ時短営業強化を改めて求められ、ようやく8時への繰り上げを決めた。国、自治体とも経済活動との両立にぎりぎりまで配慮したのだろうが、感染拡大の責任を押し付け合うような姿は国民にとって不毛だ。

 緊急事態宣言は、首相がコロナ特措法に基づき期間と区域を定めて発令し、対象の都道府県知事は不要不急の外出自粛や施設の使用制限を要請・指示できるようになる。政府の分科会が策定した判断指標は、感染状況や医療逼迫(ひっぱく)状態のデータに基づき4段階のうちステージ4(爆発的感染拡大)に達すると宣言発令を検討するとしている。

 発令の権限は国にあるが、どのステージにあるかの判断は実質的に知事に委ねられている。このため国と自治体で責任の所在が曖昧になりがちだが、見方を変えれば国と自治体が一体で判断し行動することがこれ以上に期待される制度はない。

 英国などで広まったウイルス変異種の侵入を止める入国規制強化も重要課題になってきた中、今夏には1年延期になった東京五輪・パラリンピックが控える。首相は「人類がコロナに打ち勝った証し」として実現への決意が固いが、ワクチン接種も早くて2月下旬からで、宣言発令により選手の練習環境に制約が増せば開催に再び暗雲が漂う。国、自治体はまなじりを決して臨んでほしい。(古口健二)

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