古い言い伝えに、ヒマラヤの山中には「寒苦鳥(かんくちょう)」と呼ばれる鳥がすむという。羽毛がなく、巣も作らない。夜になれば穴の中で眠る。寒さに耐えかねて雌鳥が鳴いた。「寒苦必死」―こう寒くては、死んでしまう。すると雄鳥は答えた。「夜明造巣」―夜が明けたら、巣を作ろう◆やがて朝日がさして暖かくなると、「今日不死、明日不知死」と鳴いて結局何もしない。きょうは死なない、あすのことはわからない無常の世に巣を作って何になる、と。その夜、また寒さに苦しむことになる◆首都圏で新型コロナの感染拡大に歯止めがかからない。年末年始は「不要不急の外出自粛」が呼びかけられたにもかかわらず、思ったように効果が上がらないのは、「コロナ慣れ」してしまった国民の気の緩みなのか、景気悪化を恐れる政府の対策が後手のせいなのか◆その1都3県に週内にも緊急事態宣言が出されるという。幸い県内の感染者は大幅に増えてはいないが、都市から地方へと宣言が全国に拡大された昨春の苦い記憶もある。実効性の乏しい、結局は何もしないような措置であってはなるまい◆きょうは小寒、寒の入り。畳の目一つずつ、といわれるほど日脚は伸びているというのに、本格的な寒さはこれから。週末はまた冷え込みが予想される。備えは怠らず、寒苦のときをやりすごしたい。(桑)

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