通りを行き交う歩行者がいないのは新鮮だった。昨年11月、東京の都心から唐津市へ移住したフリーライターでネットニュース編集者だった中川淳一郎さん(47)。唐津市内の繁華街から夜、ほろ酔い気分で歩いて帰宅したときに覚えた感覚だった。

 「渋谷で同じように20分間くらい歩いていると、すれ違うのは千人単位になるはずですよ。人混みを避けたくても、できるわけがない。密集すると、どうしてもぎすぎすした雰囲気になるでしょ? 佐賀に来てみると、のんびりしていいなと思いましたよ」

 人、人、人…。東京で電車に乗れば、身動きが取れないほど押し込められてきた。散歩や食事など、唐津暮らしの何気ない様子をツイッターに投稿するだけで「うらやましい」「移住して良かったですね」といった反応がある。都市部で暮らす人たちの地方への憧れも伝わってくる。

 「これまで多忙で、1年365日のうち364日働いていた状況でしてね。2020年の東京五輪が終わった後にセミリタイアすると宣言していました。『脱東京』を図るつもりで、本当は米国に移住して、まずは大統領選をリポートしようと考えていたんですけど、新型コロナウイルスでやむなく断念したんです」

 東京五輪は延期になったが、ネットニュース編集者を離れる形でのセミリタイアと移住は有言実行した。選んだ生活拠点は、縁もゆかりもない地だった。

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