収束の兆しがないまま、混迷が深まる年の瀬になった。国内外で猛威を振るう新型コロナウイルス。「密」になることを避けるために佐賀県民の日常も変容を余儀なくされ、2020年は感染症対策と暮らしをどう両立させていくか手探りの一年になった。

 県内で新型コロナの感染者が初めて確認されたのは3月13日だった。12月30日までに陽性と診断されたのは延べ464人で、3人が亡くなった。県内で実施されたウイルス検査の累計は1万4991件に上り、この数の向こうにある戸惑いや不安の広がりを思う。

 影響は多方面に及んだ。学校の一斉休校、県境をまたぐ移動や飲食店の営業自粛の要請、祭りやイベントの相次ぐ中止…。振り返れば枚挙にいとまがない。現在は「第3波」ともいえる状況が拡大、政府の観光支援事業「Go To トラベル」の一斉停止と相まって宿泊施設のキャンセルが続出し、関連産業は打撃を受けている。

 厚生労働省のまとめでは、新型コロナ感染拡大に関連した解雇や雇い止めは全国で8万人に迫る。佐賀労働局の11月20日時点の県内の集計では665人に達した。影響は労働者派遣業や製造業、サービス業などさまざまな業種に及んでいる。家計や雇用の不安に直面し、困窮する人たちへのセーフティーネットを社会でどう形づくっていくか、喫緊の課題といえる。

 コロナ禍は地方のリーダーのあり方にも焦点を当てた。国に先駆けた施策で存在感を示し、県も国の基準を上回る「念のため検査」で感染拡大を抑制、さまざまな経済支援策も打ち出した。一方で、コロナ対応の臨時交付金を財源にした「誓いの鐘」を巡っては、県議会が11月定例会で設置を取りやめる修正案を可決。山口祥義知事の肝いりの事業だったが、「今やるべきことか」と交付金の使い道が問われた。国や県の支援策が「十分ではない」という声はくすぶる。助けが行き届いていない現場がないか再点検しつつ、感染した人や関係者への差別や偏見を戒める施策は強く推し進めたい。

 不安に追い打ちをかけるように異常気象は今年も続き、7月豪雨で県内は浸水被害に見舞われた。最大級の警戒が呼び掛けられた9月の台風10号では2万人を超える人たちが避難、コロナ禍の避難対応の難しさを浮き彫りにした。密を避けるため定員を減らし、当日に避難所を追加してしのいだ自治体もあった。人手や資材をどう備えるか、見直しが迫られている。

 国策課題に目を移すと、九州新幹線長崎ルート新鳥栖-武雄温泉の整備方式を巡り、県が6月から国土交通省との協議に入ったが、県は「フル規格は受け入れられない」という姿勢は崩さず、平行線をたどった。自衛隊オスプレイの佐賀空港配備計画は、駐屯地候補地の地権者を対象にした防衛省の説明会が、地権者が多く所属する漁協の意向でノリ漁期が明ける来春以降になった。自衛隊との空港共用を否定した協定の見直し協議の行方は見通せない。

 多くの課題が21年に持ち越されていく。新型コロナの影響で来夏に延期になった東京五輪・パラリンピックも開催できるのか、懸念が付きまとうが、聖火リレーのコースが発表されるなど再準備が進む。できることから手だてを講じ、日常を繕い、光明を見出していきたい。(井上武)

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