感染防止対策を徹底し、宿泊客を笑顔で迎えるスタッフ=佐賀市富士町の旅館「鶴霊泉」

 新型コロナウイルスの感染拡大が収まらず、政府の観光支援事業「Go To トラベル」が全国で一斉に停止された28日、佐賀県内の旅館の中には、常連客やファンらの“応援宿泊”でほぼ満室になったところもあった。「本当にありがたい」。温かい心遣いに、宿の従業員は頭を深く下げた。

 「GoToが止まったからといって、キャンセルするのは申し訳なくって…」。午後3時半すぎ。砂の中からぬる湯が湧き出る「天然砂湯」が人気を集めている古湯温泉の老舗旅館「鶴霊泉」(佐賀市富士町)に夫と訪れた50代女性はこう語った。

 以前からあこがれがあり、京都から宮崎に帰省する途中に立ち寄った。「少しでも力になれればという思いもあります」と女性。コロナ禍のいま、十分な感染対策を取った上で支え合う大切さを感じている。

 政府が全国一斉停止を発表した14日以降、鶴霊泉では約200人分の予約キャンセルを受けた。本来なら年間で1、2番の書き入れ時。悲嘆に暮れる中、思いがけず励まされたのは常連客らからの電話だった。

 「空いてますか。泊まりに来ます」「そちらが営業されるなら、予定通りおじゃまします」。常連客を中心にじわじわと予約が戻り、年内は全9室がほぼ満室になった。とはいえ、一斉停止はやはり厳しい。フロントマネージャーの江打泰史さん(55)は「10、11月がGoToで好調だった分、大きな痛手」と話す。

 県内のほかの地域の旅館やホテルも同様で、「大みそかから三が日までは何とかカバーできたが、その後は空室ばかり」(嬉野市の旅館)、「7割近くキャンセルになってしんどい」(唐津市の旅館)と落胆する声も聞かれる。

 政府は感染拡大が続けば停止期間の延長も考えている。「感染対策はもちろん、満足していただける接客に努める」と江打さん。応援してくれる人の優しさをかみしめつつ、一日も早い感染収束を願っている。(中島佑子)

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