佐賀市の街頭キャンペーンで、人権啓発のチラシなどを配る参加者=3日、同市兵庫北のゆめタウン佐賀

 新型コロナウイルスを巡り、感染した人や医療従事者らへの誹謗(ひぼう)中傷や差別が問題になる中、佐賀県内の全20市町に寄せられた相談は全体で5件にとどまることが、佐賀新聞社のアンケートで分かった。各市町では感染した人に関する情報が乏しいため聴取などができず、実態の把握が難しいという。当事者を特定しようとする問い合わせが目立つ実情も浮かび上がった。

 アンケートは4日からの人権週間に合わせて実施した。相談を受けたのは4市町で、16市町はゼロと回答した。相談内容は、幼児を預かる施設で医療従事者の子どもを別室にする対応が取られたり、感染した人の家族が複数人から中傷されたりしたケースがあった。当事者と間違われるなど、誤った事実やデマに関する相談もあった。

 差別防止や啓発を進める上で各市町では、年代や居住地といった県が発表する感染情報以外は入手できず、当事者の状況の確認が難しいことが共通の課題になっていた。「相談態勢が受け身になっている」「本人の申し出がなければ事実上把握できない」などの意見もあった。

 感染が確認された市町には、氏名や住所に関する問い合わせが相次ぐなど、当事者を特定しようとする行動も多かった。「感染防止と個人情報保護を両立させるのは容易ではない」「相手側に人権侵害の意識がないことも想定され、どう理解を促すか悩ましい」との指摘もあった。

 啓発活動としては、首長が差別防止や人権への配慮を求めるメッセージをウェブサイト上に掲載したり、動画を配信したりする市町が多く、SNS(会員制交流サイト)も活用していた。コロナに関する相談は通常の人権相談として対応する市町が多いが、「前例がなく、専用の相談窓口も設けていないので、実際に対応する場合は不安」といった回答もあった。

 佐賀大教育学部の松下一世教授(人権教育)は「感染に対する不安や恐怖が社会に広がる中では、被害者から声を上げにくく、差別が可視化されにくい。正しい理解を広めるとともに、どのような言動が差別などに当たるか、相談にどう対応してサポートしていくのかを、具体的に示すことが自治体には求められる」と話す。(取材班)

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