間隔を空けて並べられた食器類。席が対面にならないように配慮している。大規模な宴会の予約は大きく減ったという=佐賀市中の小路の「旅館あけぼの」

通常用量の多いものが売れ筋の樽売りの生ビールも、大規模な宴会が減った影響か小型のものが良く出ているという=佐賀市大財のA-プライス佐賀店

 大勢の人が酒を酌み交わしながら、1年の出来事を振り返り、新年に向けた英気を養う―。毎年見られる忘年会の風景は今年、新型コロナウイルスの感染拡大で変化を余儀なくされている。「3密」を避けようと大人数での会合は減り、宴会場を閉じた旅館もある。新年会も見据え「わずかな予約もいつキャンセルの電話が入るか…」。「第3波」の懸念がぬぐえない中、飲食店や旅館の経営者からはため息が漏れる。

 対面にならないよう食器は交互にセッティングし、間隔は広く、席数も少人数だ。「1組で30人以上の予約はほとんどない」。佐賀市中の小路の「旅館あけぼの」の音成日佐男社長(72)は、予約の空きが目立つ年末の状況に気をもむ。

 緊急事態宣言が全国に拡大された4月中旬から6月上旬まで、同旅館は休館した。おかみの洋子さん(71)は休館中、ウェブの情報などを頼りに雇用調整助成金の申請などを進めた。「すっかり慣れて、今でも私が申請している」。宴会が戻らない中、出勤の調整は続けており、来年2月まで特例措置が延長されたことに胸をなで下ろす。

 「Go To トラベル」による宿泊の利用増はあるが「うちは割烹(かっぽう)旅館で、売り上げの7、8割は飲食。宴席がなくなると影響が大きい」と音成社長。感染予防には手を抜かず、検温機器や消毒液を配置し、従業員の検温も欠かさない。複数人で分け合う鍋物や鉢盛りもやめた。法事用の弁当や宅配といった宴会以外の収入源を模索しながら、県内の感染状況に一喜一憂する毎日が続いている。

 「組合員はどこも宴会場を閉めててね。『私たちぐらいは忘年会をしないと』と企画したけど、結局は料理店でやることになった」。嬉野温泉旅館組合の理事長で旅館「御宿 高砂」の池田榮一社長(71)はこう明かした。

 加盟31施設のほとんどが、宴会の予約を受け付けていない状況だ。「Go To トラベル」などの観光支援策もあり、客室の平均稼働率が100%を超える月も出てきおり、宿泊を優先させているという。

 忘年会が消えた余波は、飲食店を主な商売相手とする事業者にも及んでいる。例年は12月の売り上げが年間で一番だが「飲食業者の来店数や頻度が明らかに減っている」と話すのは、佐賀市大財の業務用スーパー「A―プライス佐賀店」の高柳圭介店長(39)だ。

 象徴的なのが樽売りの生ビールで「例年は1リットル当たりの単価が安い19リットル入りが売れるが、今年は10リットルが多い。団体客が少ないのだろう」と推し量る。

 状況を改善しようと、同店では巣ごもり消費が期待される一般客に狙いを定める。昨年は2万枚だった年末に配布するチラシの枚数を3万5千枚に増やした。「ここしか上がり目がないと感じ、思い切った」と高柳店長。家庭で作るおせち用の食材なども豊富にそろえ、商機をたぐり寄せる。(大橋諒、松田美紀)

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