「信無くば立たず」。日本の政治状況は、さまざまな疑惑が生じても国民に対し十分に説明を尽くそうという姿勢が見られず、政治家や官僚と、国民との信頼関係が著しく損なわれ、新型コロナウイルス感染症への対応を含め、不信の渦に包まれている。ただ、その状況を生み出したのは、政治家だけに要因があるわけではない。来年は秋までに衆院解散・総選挙が必ずあり、佐賀県内の地方選挙は7市町の首長、5市町の議員選挙が実施される選挙イヤーを迎える。有権者の選択する目が試される機会であることを改めて自覚したい。

 ここへ来て「桜を見る会」の前夜、安倍晋三前首相の後援会が開いていた夕食会の費用を巡る問題が再燃している。安倍氏側が費用の不足分を補ほ填てんしていた新証言が明らかになり、安倍氏が首相だった昨年の国会答弁と矛盾する事態になってきている。しかし、安倍氏がそのことにきちんと向き合って説明しようとする態度はうかがえない。7年8カ月の長期政権の下で起きた森友学園や加計学園問題を含めてすっきりせず、なおくすぶっている。菅政権による日本学術会議の推薦会員候補任命拒否問題しかりである。権力者たちの説明を厭いとう不誠実な対応にこそ「不信」の根源があるのではないか。

 そうした政治不信が際立つ中、政治をテーマにしたドキュメンタリー映画「なぜ君は総理大臣になれないのか」と「はりぼて」が全国各地のミニシアターなどで観客数を伸ばしているという。国会や地方議会に関係なく、政治のありよう、政治家はどうあるべきかの問い掛けに、日本政治の現状を投影し、共感が広がっているのだろう。各種選挙の投票率の下落傾向に歯止めがかからないだけに、遠い存在に映っていた政治を、市民が考える機会になったとすれば、その意義は決して小さくない。

 その一つである「はりぼて」は、2016年に富山市議会で発覚した政務活動費の不正問題を追及したローカル局「チューリップテレビ」の調査報道をまとめている。市議14人が相次いで辞職に追い込まれ、各地方議会にも同様の問題が波及した。一方で、監督自らも語っているが、映画は議員たちの問題だけを問うたわけではない。不正をしてきた環境を長年許した行政、有権者にも、権力を監視すべき報道機関に対しても、中身がなく見かけだけの「はりぼて」だったのではないかと問題点を突きつけている。

 県内選挙イヤーの幕開けとなる1月31日投開票の唐津市長選は現職と新人の一騎打ちとなる見通しである。今月29日に両陣営が事務所開きを行い、前哨戦が動き出した。同時に実施される市議選は定数が二つ減って28となり、今のところ現職25人、新人8人の出馬が見込まれ、激戦の様相だ。新型コロナ対策をはじめ、人口減社会への対応、産業振興、市民会館の建て替え計画など各課題についてどのような方向性を示し、まちづくりを担っていくのか。公約や施策の中身をしっかりと見極める目を養っておく必要がある。

 政治不信の時代、候補者がどれだけ市民に向かって誠実に語れるかも一つの判断材料となろう。有権者も政治を諦めず、コロナ禍でもたらされた新たな社会づくりに関心を示していくことが、政治に緊張感を生む。(辻村圭介)

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