「コロナ対策交付金の使い方がおかしい」「医療現場の支援に使うべき」-。こんな声が佐賀県に寄せられている。きっかけは25日に放送されたTBSの情報番組「グッとラック!」。新型コロナウイルス対策に充てられる交付金の使い方を巡り、県を批判した。これに山口祥義知事は「TBSに抗議する」と反発。県に寄せられた電話やメールは27日までに約70件に上る。三つの論点から実情を探った。

【論点1】コロナ対策交付金とは何か

 コロナの感染拡大に伴う緊急経済対策として内閣府が所管する交付金で、総額3兆円が計上され、佐賀県はこれまでに約97億円を予算化した。名称は「コロナ対応地方創生臨時交付金」で、使途の自由度が高いのが特徴。国の資料によると「感染拡大の防止」といった医療現場への直接的な支援もあれば、地域経済の活性化や「新しい生活様式への対応」というイメージのつかみにくいものも対象になる。

 国の例示では、新しい旅行スタイルの実現、地域の文化芸術・スポーツなどの創造発信、地域の再生エネルギー導入拡大、行政手続きなどのオンライン化など政策分野は幅広い。

 番組で批判された佐賀県の事業は四つ。県はいずれも「交付金の趣旨に沿う事業」と説明する。

 障害者スポーツの拠点となる体育館のトイレを洋式化し、床をボードで乾式化する事業(6730万円)は文部科学省が感染症予防の事業として例示している対策の一つになっている。

 中高生スポーツ大会の電光掲示板やスコアボードの購入(5809万円)は県が高校総体や高校野球の代替大会を無観客で開催し、全試合を動画配信したことがきっかけ。担当課は「動画配信で試合経過が分かりにくいとの声が多く寄せられた。新しい生活様式に対応した大会に必要だ」。

 佐賀空港の多目的スペースに宇宙をテーマにした展示をする事業(2400万円)に関し、担当課は「国が例示した新しい旅行スタイルの実現に合致する」と説明する。

 国立ハンセン病療養所菊池恵楓(けいふう)園(熊本県)に佐賀が寄贈した鐘と同じものを県庁に設置する事業(779万円)も国が示す「感染症への誤解や偏見に基づく差別防止を呼び掛ける啓発事業に当たる」とする。

【論点2】佐賀県のコロナ対策

 番組では「医療現場への支援を優先すべき」と批判を受けた佐賀県。これを受け、山口知事は26日の対策本部会議で「医療従事者と連携し、徹底した対策を講じている」と反論した。

 県は6月議会に医療機関の医師や看護師らに5万~20万円、介護、障害福祉サービス施設の従事者に5万円の慰労金を支出する予算を計上した。9月補正予算では県独自に調剤薬局に勤める薬剤師らに5万円の慰労金を支出する事業を盛り込んだ。このほか、医療機関の病床をひっ迫させないための備えとして、ホテル230室を貸し切り、無症状や軽症の感染者を療養させるなどの対応も取った。

【論点3】財源構成と事業の適否

 県幹部は財源構成について「必要な事業に関し税収が厳しい県の一般財源を使うより、事業趣旨に合致した国の交付金を有効活用するのは財政運営上、適切な対応だ」と主張する。障害者向けトイレの改修は以前から要望があったといい、「交付金を目的と違うことに使うのは論外だが、感染症対策を兼ねて実現できる機会があれば実施すべき」とする。

 一方、番組出演者の動画配信サイトでは、県を批判するコメントが多く書き込まれている。「佐賀県民ですが本当に使い道考えて欲しいです」「もう少し県民や医療従事者などに寄り添った使い方を考えて欲しい」「もともとやりたかった事にコロナ交付金を充てる為の苦しい言い訳」などの厳しい言葉が並ぶ。

 佐賀大学経済学部の児玉弘准教授(行政法学)は番組の反響が広がる背景に予算化のタイミングの問題があったのではないかと推測する。「交付金の趣旨に沿った事業だったとしても鐘に780万円というのは、第3波への不安が募り、経済的に厳しい状況にある人たちにとっては違和感があるだろう」。その上で「県が既に医療への支援はやっていることも含め、なぜ鐘の事業を今やるべきなのか、必要性やタイミングについて知事には説明責任が求められるし、効果は厳しく検証されるべきだ」と語る。(取材班)

 

【TBS情報番組の概要】「誓いの鐘」など疑問視

 自治体が新型コロナウイルス対策に充てる国の地方創生臨時交付金を巡り、25日放送のTBS情報番組「グッとラック!」で、佐賀県などが実施する交付金事業について「これがなぜコロナ対策になるのか」と疑問を呈した。番組のコメンテーターからは「交付金は困っている医療従事者に配るべき」などと批判が相次いだ。

 県は11月補正予算案に、新型コロナに関する偏見や差別への警鐘を鳴らす「誓いの鐘」製作(779万円)などの事業を盛り込んでいる。番組では、県民や関係者がインタビューに「医療従事者にもう少し手当を」「鐘を鳴らしても意味がない。もっと子どもや親への支援を充実させて」と答えていた。

 スタジオでは、落語家の立川志らくさんが「困っている家庭や医療関係者に全部やって、余ったお金で鐘をこしらえるとかならいいが、なんで最初からこんなことをやっているんだ」と語気を強めた。お笑いコンビ「ロンドンブーツ1号2号」の田村淳さんは「佐賀県知事にはがっかりした。医療従事者や介護の現場、子どもたちにお金を回すことより優先されることは一つもない」と批判した。

 田村さんは動画投稿サイト「ユーチューブ」でも、佐賀県のコロナ対策や山口祥義知事の姿勢に言及している。

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