人口減少などで苦しい経営が続く地方銀行や信用金庫の再編を促進しようと政府、日銀が支援策を相次ぎ打ち出した。だが肝心なのは経営基盤を強固にし、顧客ニーズに合致した金融商品やサービスを提供できるかどうかにある。そのことが地元経済の安定と発展に資する。まず「再編ありき」ではなく、地域金融機関としての魅力向上に全力を傾けてもらいたい。

 人口減少の加速に超低金利の長期化、そして地方経済の衰退で地銀の経営は苦しい。上場地銀・グループ77社の今年9月中間決算は、コロナ禍の影響も加わり約6割で前年同期に比べて純利益が減少か赤字になった。

 直ちに経営難へ陥る状況ではないものの、「利益の低下傾向は続く」(日銀関係者)と金融当局の危機感は強い。地銀の経営が危うくなれば、お金の流れを通じて地元経済へも悪影響が及ぶためだ。1990年代後半の金融危機を思い出してもらいたい。

 そのような危機感を背景にこのタイミングで打ち出されたのが政府、日銀による地銀再編の支援策だ。菅義偉首相は就任直前の9月に「(地銀の)数が多すぎる」と再編の必要性を明言しており、その意向を踏まえた対応でもあろう。

 政府の対応では、地銀の資本増強へ公的資金を受け入れやすくする改正金融機能強化法が8月に施行済みのほか、地銀同士の合併・統合を容易にする独占禁止法の特例法が11月27日に施行された。

 加えて政府は、合併や経営統合に伴うシステム統一などの費用を軽減する補助金の創設を12月にまとめる追加経済対策に盛り込む方針だ。

 地銀の経営強化や再編のための政策的枠組みがほぼ出そろう形であり、経営戦略として合併・統合などを検討中の地銀経営者には有用となろう。

 政府と足並みをそろえた日銀の支援策は、経営統合や経費削減などで収益力を高めた地銀に対して、日銀に預けている当座預金に金利を年0・1%上乗せする方法だ。当該行にとっては収入増のメリットがある。

 日銀自身が認めるようにこれは事実上の補助金と言える異例の政策である。一方で、デフレ脱却のため日銀が当座預金にマイナス金利を適用していることが地銀を苦しめており、自己矛盾した政策対応でもあろう。マイナス金利政策の副作用を率直に反省し、政策を修正するのが先ではないだろうか。

 地域経済の要を担う地銀が直面する課題は山積している。

 柱である利息収入のじり貧が避けられない中で、手数料や事業承継支援など新たな収益源をどう開拓し伸ばしていけるか。一方で、金融とITが融合したサービス「フィンテック」などの開発コストを賄い、時代の要請にどう応えていくか―。

 いずれもしっかりした収益基盤なしには対応不能である。そのための有力な選択肢として他行との合併・統合など再編があるのは当然だ。

 ただ、過去の例が示しているように銀行合併の効果が表れるには人員や店舗、間接部門の整理集約など厳しいコスト削減が不可欠となる。そして、そのことは時として顧客側から見れば「サービスの低下」と映る場合も少なくない。

 自行だけでなく顧客、そして地元経済への利害得失を見極める経営者の力量が問われる。(共同通信・高橋潤)

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