文化

 豊臣秀吉による文禄・慶長の役の出兵拠点として築かれた名護屋城。その城跡と全国の大名の陣跡を多くの人に探訪してもらおうと、新たな取り組みが始まった。また、今年開館50年を迎えた佐賀県立博物館も、特別展や常設展を通して、佐賀の魅力を発信し続けている。

名護屋城跡利活用

“はじまり”の城下町を体感

 佐賀県は、唐津市鎮西町・呼子町および玄海町に広がる特別史跡「名護屋城跡並びに陣跡」の魅力を磨き上げ、文化ツーリズムの拠点として活用する「名護屋城跡・陣跡プロジェクト」を進めている。

名護屋城跡全景(2018年3月、ドローンで撮影)

 

 名護屋城は、16世紀末に豊臣秀吉が朝鮮出兵の拠点として築いた城で、総石垣で天守閣を備え、当時としては大坂城に次ぐ広さを誇ったという。城の周囲には、島津義弘や徳川家康、石田三成、前田利家、伊達政宗ら、名だたる戦国武将が陣を構え、城下町には全国から商人が集い、世界でも指折りの都市が存在していた。

 現在、現地には建物は残されていないものの、陣跡だけで約150カ所が確認されている。また、この地域は、能や茶道、陶磁器など今に伝わる伝統文化の発展に大きな影響を与えた。多くの人々が集い、交流が生まれた「文化の起点」としての名護屋城エリアを幅広い層に訪れてもらおうと、「おわりじゃない はじまりの名護屋城」をプロジェクトのコンセプトに選定した。

 11月1日には、東京大学史料編纂所教授の本郷和人さんや佐賀県出身で東京のテレビ局で活躍するアナウンサーの片渕茜さん、唐津市呼子町出身で化粧品開発などの地域ブランディングで活躍する松尾聡子さんを招いた講演会とトークショーを開催。14、15日には、島津義弘陣跡に隣接する波戸岬キャンプ場で、鷹匠(たかじょう)の実演見学、茶道や能のワークショップを楽しめるユニークなキャンプイベントを開いた。

 さらに29日には、陣跡を巡るサイクルルートの試走イベントを開く。かつての城下町エリアや戦国武将の陣跡見学とともに、波戸岬の絶景や呼子朝市などの現地の観光も楽しむ。今後も、歴史と文化と観光資源を組み合わせた文化ツーリズムの振興を通じて、“はじまり”の城下町・名護屋城の魅力を全国に発信していく。

 

県立博物館50年

歴史、文化伝える知の拠点

 佐賀県立博物館が10月、開館50年を迎えた。明治維新100年の記念事業としてオープン。当時、最先端の技術で建てられた博物館は佐賀を代表するランドマークとなり、県内外に佐賀の歴史、文化を伝える知の拠点として大きな役割を果たしている。

 東西南北に張り出す独創的な建物は、建築の大家、内田祥哉(うちだよしちか)氏と、高橋靗一(たかはしていいち)氏(第一工房)が共同で設計した。当時の最新技術を駆使し、四方に階段を配した立体的な建造物を実現させた。特徴的な建物は注目を集め、1971年に建築学会賞作品賞を受賞している。

特別展「THIS IS SAGA」で注目を集めた、西洋で人気が高かった桜の絵付けがあしらわれた有田焼のセット=佐賀市の県立博物館

 50周年特別展「THIS IS SAGA―2つの海が世界とつなぎ、佐賀をつくった―」では、佐賀ゆかりの名宝105点が一堂に集結。有明海と玄界灘という二つの海を切り口に、先人の進取と創造の姿を紹介し、1万348人が来場した。

 展示品の一つ、伊万里市の腰岳から産出した黒曜石は、石器の原料として、約1万5千年前に海を越えて朝鮮半島や琉球列島へと運ばれている。二つの海は、大陸から文化を受け入れるだけでなく、佐賀から全国、世界へ発信する経路となっていた。

 国宝「肥前国風土記」や高麗王家のために作られた世界最大級の高麗絵画「楊柳観音像」、国史跡「東名遺跡」の縄文時代に作られた編みかご、国の特別史跡・吉野ケ里遺跡関連では国重文「巴型銅器鋳型」、煎茶文化を広めた売茶翁を敬愛していたという伊藤若冲による「売茶翁像」など貴重な品々が並んだ。

 二つの海が育んだ歴史と文化が全国、世界との交流を重ねることで、現在の佐賀の土壌を育んできたことがうかがえる。約1万点の収蔵品のうち、展覧会で紹介できるのもほんの一部。今後も、佐賀の良さ、魅力をアピールできる企画で、文化、歴史を発信し続ける。

 

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