黒船の来航から明治維新という激動期の幕末、多彩な人材が活躍した。その一人である坂本龍馬は世界を見つめ、「日本という国を変えてみせる」との志を抱いた。10代の時に詠んだ歌は「世の中の人はなんとも言わば言えわがなすことはわれのみぞ知る」◆教育者の吉田松陰は世界を知りたいと黒船に潜入して捕らえられた。「かくすればかくなることと知りながらやむにやまれぬ大和魂」は、その時に詠んだ歌である◆時代の転換期にあった幕末、若者の多くに「この国を思う」心があったことだろう。時代の転換期に生まれたことも何かの縁、いや宿命と思う人もいたかもしれない◆この人もそうだったのだろうか。作家の三島由紀夫である。1970年のきょう11月25日、陸上自衛隊市ケ谷駐屯地で自衛隊員に「決起せよ」と呼び掛けた後に自決した。この三島事件が起きた年は終戦から25年。三島は45歳だった。推測の域を出ないが、三島は高度経済成長の裏で日本が大切なものを失っていると憂い、「この国を変えたい」「変えてほしい」と思ったのだろうか◆コロナ禍の現在も大きな転換期にあるのは間違いないだろう。とはいえ、憂国、愛国も度が過ぎてはいけない。命あっての物種である。50回目の「憂国忌」に三島をしのびつつも、龍馬や松陰の志を心に留めておきたいと思う。(義)

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