安倍晋三前首相の後援会が都内のホテルに支援者らを集め開催した「桜を見る会」の前夜祭を巡り、東京地検特捜部が任意で安倍氏の公設第1秘書らを事情聴取した。ホテルへの支払総額と支援者らの会費との差額分を補塡(ほてん)したなどとして、公選法違反(寄付行為)や政治資金規正法違反の疑いで安倍氏らに対する告発状が出されている。

 このホテルで1人当たりの飲食代は少なくとも1万1千円とされる。しかし参加者が支払った会費は5千円。足りない分を安倍氏側が穴埋めし、収支を政治資金収支報告書に記載しなかった疑惑が指摘され、安倍氏は国会で「事務所から費用の補塡はない」などとする説明を繰り返してきた。

 野党から主張の裏付けとなるホテルの明細書を提示するよう求められても「明細書の発行は受けていない」と、かわし続けた。だが明細書は存在し、安倍氏側による一部補塡を示す内容とされる。特捜部は立件の可否を判断するに当たり、安倍氏への聴取も検討しているもようだ。補塡が事実なら、安倍氏はうそを重ねてきたことになる。

 安倍氏は政治とカネの問題が起きるたび「一人一人の政治家が襟を正すべきだ」としてきた。その言葉通り、疑惑を巡りホテルから明細書を取り寄せるなど資料を整えた上で、説明を尽くすことが求められる。もはや何も語らず、やりすごせるような状況ではない。

 安倍氏の公設第1秘書が代表を務める「安倍晋三後援会」は安倍政権が発足して以降、2013年から19年にかけて都内のホテルに地元・山口の支援者らを呼び、桜を見る会の前日に夕食会を開催。15年からの5年間は二つのホテルが会場となり、19年は支援者ら約800人が参加した。会費は1人5千円だった。

 ところが会場となったホテルのパーティープランは1人1万1千円からで、会費だけでは賄えない。ホテルへの支払総額は15年からの5年間で2千万円を超え、集めた会費との差額は計約800万円に上る可能性があり、これを安倍氏側が補塡したのであれば、公選法が禁じる有権者への寄付行為に当たる。安倍氏は補塡を全面否定した。

 さらに後援会の収支報告書に収支の記載が一切ない点については、会場入り口で安倍事務所職員が支援者らから集金し、ホテルの領収書をその場で手渡し、集めた会費をホテル側に渡したと説明。収支報告書への記載義務はないと主張した。

 これに対し野党はホテル側の領収書や明細書の提出を要求した。しかし安倍氏は拒んだ。また桜を見る会を巡っては、安倍氏の後援会関係者が多く招かれ「私物化」しているとの批判も広がりを見せたが、内閣府が早々に19年分招待者名簿を廃棄していたため、いまだ解明に至っていない。

 安倍氏は森友、加計問題でも、さしたる根拠も示さず、ひたすら疑惑を否定し、まともに説明責任を果たしてこなかった。森友問題で元財務省近畿財務局職員の妻が「夫は決裁文書改ざんを強制され、自殺に追い込まれた」と、国と当時の財務省幹部に賠償を求め提訴したが、菅義偉首相も調査に動こうとしない。

 ここで、また桜を見る会前夜祭の疑惑をうやむやにするようなら、国民の理解は得られない。検察の捜査を待たず、国会で安倍氏に直接説明を求め徹底解明すべきだ。(共同通信・堤秀司)

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