中国の全国人民代表大会(全人代)常務委員会会議は、香港立法会(議会、定数70、任期4年)の議員について、中国・香港政府への忠誠を求め、資格を剝奪する基準を決定。香港政府は民主派議員4人の資格を即日剝奪した。

 4人以外の民主派議員の15人全員が抗議のために辞表を提出。米英オーストラリアなど5カ国外相は香港の「高度の自治」を損なうと指弾する共同声明を発表し、日本も香港の「一国二制度」の維持を求めた。

 中国は1997年に英植民地、香港の返還を受けた際、一国二制度を国際社会に約束し、香港基本法(憲法に相当)に明記。基本法には普通選挙制の導入など民主化の道筋も盛り込んだ。

 多数の住民は香港の「自由と民主主義」を望んでいる。有権者の投票で選ばれた議員の恣意(しい)的な解任は、民主主義を根底から覆す暴挙だ。中国は香港の世論と国際社会の声に謙虚に耳を傾け、今回の措置を撤回し、一国二制度と高度の自治を堅持するべきだ。

 昨年、香港では中国への容疑者引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」改正案に反対する大規模デモが頻発した。危機感を強めた中国は今年6月末、国家の分裂や政権の転覆、テロ活動、外国勢力と結託して国家の安全に危害を加える行為を禁じた香港国家安全維持法(国安法)を制定、施行し、統制を強化した。

 8月、香港警察は「民主の女神」と呼ばれた活動家、周庭氏と、中国に批判的な香港紙、蘋果日報の創始者、李智英氏らを同法違反の容疑で逮捕し、著名な民主派への弾圧を本格化させた。

 また香港政府は9月に予定されていた立法会選挙を、新型コロナウイルスの感染拡大を理由に1年延期。国安法への反発から民主派が勢力を伸ばすことを阻止した。

 10月からの立法会は民主派の抵抗により再三審議がストップ。香港の林鄭月娥行政長官は全人代に議員資格について審議を要請した。

 全人代常務委の決定は(1)香港独立を主張(2)中国の香港への主権行使を認めない(3)外国勢力に香港への干渉を要求(4)国家の安全を損なった―などの議員について「資格を即時剝奪する」とした。

 米国のバイデン次期政権は地球温暖化やコロナ対策などでは中国と協調の道を探りながらも、人権や香港の問題ではトランプ政権より厳しいとの見方もある。中国はまず香港問題で強硬姿勢を示し、米国の機先を制しようとした形だ。

 だが、反政府の民主派議員が任意に解任されれば、立法会は全人代と同様に政府のいいなりに立法を行う「ゴム印議会」となり、権力への監視機能は失われてしまう。一国二制度を壊してしまう議員資格剝奪は容認できない。

 中国共産党は10月の重要会議、第19期中央委員会第5回総会(5中総会)のコミュニケに「香港の長期にわたる繁栄と安定を維持する」と盛り込んだ。しかし、強権で民意を封じ込める姿勢では長期的な「繁栄と安定」の維持は難しい。

 香港では新型コロナ感染拡大のためデモも許可されず、容赦ない弾圧で民主派の間には無力感も漂う。民主主義の価値観を共有する日米欧は連携を強化し、中国に対し、香港や国内の人権弾圧をやめるよう粘り強く働き掛けていきたい。(共同通信・森保裕)

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