医者というのは患者さんを「診断」して「治療」するのが仕事ですが、全人的に患者さんを診るには、病気だけでなく患者さんの抱えるさまざまな問題を丁寧に挙げて解決することが必要です。このような考え方を「問題志向型システム」と呼び、佐賀大学病院は開院以来このシステムに則ったカルテを用いてきました。

 私は総合診療医として最初にお会いした患者さんからはできるだけ短時間に必要不可欠な問題点を挙げることに努めてきました。このことは、患者さんのためにも、自分の研さんのためにも非常に良かったと思っています。

 しかし、最近は高齢の認知機能に問題のある患者さんが増え、診察室に一緒に入って来られたご家族も日頃同居されていないことが多いです。そうすると、情報が十分に得られません。人の記憶に頼るだけでは質の高い医療が提供できない恐れがあります。

 このようなことを防ぐために、国全体としては、患者さんの重要な健康問題の歴史を医療者間で共有できる仕組み作りを急ぐ必要があります。ただし検査結果と処方内容だけがデータで共有されるのでは、患者さんのためにはならないだろうと思います。健康観や終末期の医療に関する希望なども含まれないといけません。そのためには、自分のことを良く知ってくれている「あなたの専門医」(かかりつけ医)をきちんと持つことが不可欠です。(佐賀大学医学部附属病院卒後臨床研修センター専任副センター長 江村正)

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