「大野城心のふるさと館」で公開されている井手貞一さんの手記「戦時物語」

 太平洋戦争中にビルマ(現ミャンマー)に出征した佐賀県武雄市出身の故井手貞一(ていいち)さん(1995年に97歳で死去)が、当時の惨状を挿絵とともに克明に記した手記「戦時物語」が、福岡県大野城市の「大野城心のふるさと館」で初めて公開されている。29日まで。

 40代だった44年6月に旧日本軍に臨時召集され、現地では泥水をろ過し、第一線に届ける仕事を担った。翌45年8月の終戦後、英国の捕虜になり、復員した。手記では戦況が悪化する中、補給も追いつかず、栄養失調やマラリアで倒れる人々を目の当たりにし、命からがら退却する姿を描いた。

 爆撃を避けながら、急ぎ足で戦線から退避する状況を「もうもうたる火煙のために呼吸も停止せんばかりの苦しさ」と回顧。敵から身を守るために男装した従軍看護師から「歩けません」「早く殺して」「そのピストルで」と悲しい声で懇願されたことにも触れた。その場から立ち去ることしかできず「胸を突かれる思い」だったという。

 こうした状況をジャングルでは竹の皮に、捕虜になってからは缶詰のラベルの裏にメモした。

 公開された手記は、自身が「終戦三十三回忌」の77年にメモに基づいてまとめたもので、B4判15ページ。自由に恵まれ、戦争を知らない若い人が「戦争を繰り返すような間違いが無いように」読んでほしいと、残そうとした理由もつづった。

 懐中時計や水筒などの遺品や関連資料も展示している。保管していた福岡県大野城市の次男勈(いさむ)さん(83)は「父の手記を通じ、平和の尊さを学んでもらえれば」と願う。大野城市教育委員会の担当者は「ビルマ戦の実情を伝える貴重な記録遺産」と評価している。【共同】

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