流域治水のイメージ

 「脱ダム」の象徴とされた川辺川ダムについて熊本県が建設容認に転換する方向となった。整備の是非で揺れている例は各地にあり、ダム推進論が広がる可能性もある。ただ、ダムは河川氾濫を防ぐ効果が高い半面、膨大なコストと工期の長さが課題だ。水害が大規模化する中「ダムは想定外の大雨には対応できない」と、効果の限界を指摘する専門家もいる。

▽球磨川で甚大被害

 熊本県の蒲島郁夫知事は2008年に川辺川ダム反対を表明して以来「ダムによらない治水」を掲げてきたが、今年7月の球磨川流域の甚大な被害を目の当たりにし「ダムの在り方を含め検証したい」と軌道修正した。

 ダムがあれば被害を軽減できたとする国の推計も示され、流域首長らにも推進論が拡大、建設を認める方向に傾いていった。水質への影響など反対意見も根強いが「全員を100%満足させることは難しい」と蒲島氏。ダムを含む治水策が住民に支持されなければ「責任を取る」と覚悟する。

 ダム容認の動きはほかにもある。事業費約1080億円の大戸川ダム(滋賀県)は09年に計画が凍結されたが、三日月大造知事は昨年「治水の安全度を上げるために必要」との姿勢を打ち出した。滋賀県甲賀市の担当者は「市内で浸水被害が相次いでおり、早期整備を訴えていく」と話す。

 1971年に予備調査が始まった事業費約485億円の城原川ダム(神埼市)。住民の一部が反対してきたが、関係自治体は16年、増水時だけ水をためる流水型ダム(穴あきダム)とする案を了承し、着工に向けて設計や測量が進む。県担当者は「水害対策に欠かせず、一日も早く建設してほしい」と訴える。

▽今なお抗議行動 

 「コンクリートから人へ」を掲げた旧民主党政権は10年、83ダムの見直しに着手。54ダムは継続、25ダムは中止となったが、4ダムはまだ検証中だ。事業費約170億円と見込まれる岐阜県所管の大島ダムはその一つ。県は別のダムを建設中で「工事を同時に進める財政的余裕はなく、まだ検証を進められていない」(県担当者)という。

 長崎県が計画を進める石木ダムの工事現場では住民による座り込みなど抗議運動が続く。反対する市民団体代表の松本美智恵さん(68)は「川辺川ダムは、流域首長が建設推進に転換したことで知事の判断が傾いた。市民の声はなかなか行政に届かない」と嘆く。

 ダムの工期は一般的に10~20年程度かかるとされ、川底掘削や堤防強化などに比べ費用がかかる。国土交通省の諮問機関「淀川水系流域委員会」で委員長を務めた同省OBの宮本博司さんは「川辺川はダム計画中止後、人命を救う代替策をやってこなかった。きちんとやっていれば被害を軽減できたはずだ」と指摘。

 その上で「ダムは限られた容量以上の水はためられず、想定外の大雨に対応できない。ダムを造れば安心という論調は間違いだ」とし、堤防強化や遊水地整備など、流域全体で治水対策に取り組む必要があると話した。【共同】

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