菅義偉首相は、追加経済対策を盛り込んだ2020年度第3次補正予算案の編成を関係閣僚へ指示した。

 新型コロナウイルスの感染が依然広がる中で、事業者や雇用を守るための対策は引き続き重要である。だが本年度は2度の補正による予算が残っている上、年末の21年度当初予算案の編成とも重なる。3次補正は新型コロナ対策など急ぎ必要な予算に絞り込むべきだ。

 政府は本年度、新型コロナ対策として既に2度の補正予算を編成。予算規模25・7兆円の1次補正では、1人一律10万円の給付金や観光・飲食喚起事業「Go To キャンペーン」の予算を手当て。同じく31・9兆円の2次では、雇用調整助成金の拡充や家賃支援の資金を確保した。

 3次補正は、与党の要望を反映して(1)新型コロナ感染の拡大防止(2)ポストコロナへ経済構造の転換(3)防災、減災、国土強靱化(きょうじんか)に向けた安全、安心―の3本柱で構成される見込みという。

 しかし、このような総花的な編成は補正予算の性質から好ましくない。政府、与党からは早くも「10兆円、15兆円どころか30兆円ぐらいあってもいい」(世耕弘成自民党参院幹事長)と規模を巡る発言まで出ている。

 これでは来年秋までに見込まれる衆院解散・総選挙を意識して規模を優先し、中身をなおざりにしていると言われても仕方あるまい。

 このタイミングで補正を組むのであれば、やはり重視すべきは雇用であろう。企業が支払った休業手当の一部を国が補う雇用調整助成金は、コロナ禍による助成拡充の特例措置が12月末に期限を迎える。

 政府は来年1月以降も継続する方向だが、特例措置の段階的な縮小を検討しているという。コロナ不況の長期化により今後の雇用悪化が懸念される。雇用調整助成金は重要なセーフティーネットであり、縮小は慎重に議論してもらいたい。

 一方、消費の喚起策では来年1月末までとしている観光業の支援事業「Go To トラベル」の期間延長へ調整しており、必要な費用を盛り込む方向だ。延長に当たっては利用が週末や特定の地域に偏らないように平日利用の促進策を打ち出すなど、運用面の改善を検討する見通しである。

 一連のGoTo事業を巡っては、旅行や飲食代の割引手続きを事業者のサイトでする必要があるなどの点に、インターネットに不慣れな高齢者を中心に不満の声が強い。支払時に割引が完了するなど簡便で、不正まがいの行為を許さない仕組みに改めるべきだろう。

 菅首相は、3次補正を来年度当初予算と合わせた「15カ月予算」として編成し、目玉政策であるデジタル化の関連施策も盛り込む考えとされる。

 このように補正を本予算の「抜け穴」として使う手法は安倍前政権で毎年度のように繰り返され、歳出と債務残高の膨張につながってきた。

 20年度は当初予算と2度の補正を合わせて歳出総額が160兆円を突破し、財源を賄うための新規国債の発行は90兆円を上回る。その上、コロナ不況が響き税収は、当初見積もりより数兆円規模で下振れすると見込まれている。

 この極めて厳しい財政状況を考えても、3次補正に「冗費」と受け取られる支出を入れる余裕はないはずだ。(共同通信・高橋潤)

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