関連行事の本殿祭に臨む山内啓慈総取締(右手前)と戸川忠俊宮司(左)と=10月29日、唐津神社

参拝者が多く訪れ、境内に露店が並んだ唐津神社=3日、唐津市南城内

 みこしが西の浜(旧大成小グラウンド)に渡る11月3日の御旅所神幸は、くんち行事で最も大事な一日。そして一年で最も唐津が活気づく一日でもある。今年は曳山(ひきやま)巡行がなく、唐津神社での神事のみとなったが、「くんちはくんち」と神社には多くの人が参拝に訪れた。町の一角から囃子はやしの笛や太鼓の音も響いたが、この日は「寂しかね」があいさつ代わりとなった。

 ■検討委で是非協議

 曳山巡行中止の発表は8月。「皆の命を危険にさらすわけにはいかない。断腸の思い」。くんちを取り仕切る曳山(ひきやま)取締会の山内啓慈総取締(71)が報道陣を前に苦渋の表情で告げた。同神社の戸川忠俊宮司(45)も「主催者として感染拡大を招く行為は慎むべき」と続いた。1番曳や山ま「赤獅子」の誕生以来続く200年の重みを受けながら、関係者は中止の決断を下した。

 今春、新型コロナ感染が全国に広がり、各地の春祭りが中止、規模縮小を迫られた。唐津神社も4月の春季例大祭で14台の曳山が並ぶ「社頭勢揃い」を中止した。4月中旬には半年先の10月開催の「長崎くんち」が奉納踊りの中止を表明するなど、その後も夏・秋祭りの中止発表が相次いだ。

 関係者は5月、巡行の是非を協議する「唐津神祭コロナ検討委員会」を立ち上げた。タイムリミットは7月末か8月上旬。日程変更やルート短縮の案が出るなど何とか巡行実施を模索した。

 しかし、7月に恐れていた“第2波”が襲来。曳山が出れば人が集まり、県外からも多くの見物客が訪れる。コロナの治療法が十分に確立されていないことから、同月下旬の会議で巡行断念を決めざるを得なかった。一いち縷るの望みを抱いていた山内総取締は「虚脱感しかなかった」と振り返る。

 ■疫病流行鎮静願い

 秋に本番を迎えるため、夏場の幕洗いをはじめ、9月末まで曳山関係の行事や会議をすべて中止にしていた。何もなくなり、地域の結び付きを心配する声がある。山内総取締も「(関連行事は)子どもたちの成長を見守る場でもある」という。巡行の“ブランク”が、来年、事故のもとにつながるかもしれない。総取締の悩みは尽きない。

 巡行中止は単に曳山が町に出ないだけでなく、地域に与える影響も多方面に出た。経済や観光関係者の損失や落胆は大きい。唐津では「くんち中心に1年が回っている」と言われ、精神的支柱の喪失でもある。

 3日、本来の場所とは違い、唐津神社で御旅所祭が執り行われた。今回は疫病流行鎮静祈願祭も兼ね、戸川宮司がコロナ鎮静の祝詞を奏上した。「来年こそは」。山内総取締をはじめ参列者は心に期した。列をなして参拝した市民も同じだろう。(成富禎倫)=おわり=

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