イノシシの箱わなを仕掛ける澁谷喜寿さん(右)と谷口重光さん。奥はイノシシがすみかにしているぼた山=杵島郡江北町

イノシシに荒らされた田んぼ。収穫前に荒らされると、稲穂に臭いが付いて駄目になるという=杵島郡江北町

伊万里市二里町中田地区の捕獲班が捕らえたイノシシ

 農業に深刻な被害を与えるイノシシを地域ぐるみで駆除する「捕獲班」の取り組みが佐賀県内で広がっている。駆除を担ってきた猟友会など狩猟者の減少と高齢化が進み、住民が自ら集落を守る必要性が出てきた。県などによると、現在は13市町で約40班が活動し、狩猟技術の向上などが課題になっている。

 捕獲班は狩猟免許を持つ人と持たない人がチームを組み、箱わななど銃器を使わない方法でイノシシを捕らえる。免許を持たない人は「わなの設置」「獲物にとどめを刺す」以外の補助的役割を担う。国や県はかつて、免許を持たない人が有害鳥獣の捕獲に従事することを一切認めていなかったが、狩猟者の減少と高齢化を理由に要件を緩和した。

 県生産者支援課によると、県内の狩猟免許所持者は1725人(わな猟、銃猟などの延べ人数=2月現在)で減少傾向が続いている。60歳以上が7割近くを占める一方で、イノシシ被害は絶えず、過酷な駆除作業を担いきれなくなっている。そこで県は2016年度、捕獲班の取り組みを制度化した。

 杵島郡江北町の岳地区は17年に捕獲班を結成した。山が浅いためイノシシが出る地域ではなかったが、8年前からぼた山にすみ着いて田んぼや果樹園を荒らすようになった。集落の周囲4キロを金網で囲っても侵入され、困って町に相談したところ、捕獲班の制度を紹介された。

 岳地区には狩猟免許を持つ人がいなかったため、住民2人がわな猟の免許を取得した。箱わなの購入を含め、経費は補助金で賄った。現在は10基のわなを仕掛け、補助員6人を含む8人で手分けして見回り、イノシシが入っていればとどめを刺して埋設処分する。見回りには別の住民も協力する。

 これまでに捕獲した数は46頭。岳地区の成果を受け、近隣の6地区にも捕獲班ができた。ただ、班長の澁谷喜寿さん(66)は「初めのうちは次々と捕れたが、イノシシも賢いので最近はあまり捕れない。被害は減っていないので、私たちの方がもっと勉強しないと」と課題を挙げる。

 伊万里市二里町の中田・炭山地区の捕獲班は毎年30~40頭を捕獲している。国見山(標高776メートル)の中腹にある集落は昔からイノシシに悩まされ、県の制度ができる前から地元の猟友会と連携して捕獲に取り組んできた。

 今も年2回ほど県伊万里農林事務所も加わり勉強会をしている。班長の山崎光英さん(67)は「猟友会に仕掛け方を教えてもらったり、農林事務所に暗視カメラを借りて出没場所を調べたり、イノシシとの知恵比べに勝つには地域外との協力も大切になる」と話す。(青木宏文)

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