青空にカラフルなバルーンが映える=2017年11月1日、佐賀市の嘉瀬川河川敷

 夜が明けるのを待っている。

 草むらのしめった虫の音が、やがて鳥のあかるい声に変わる。ぴりっとした寒気が秋の深まりを伝える。いつもなら、嘉瀬川の河川敷からバルーンが飛び立つ時刻…。

 コロナ禍は季節の風物詩をことごとく奪い、時の流れに私たちは迷ったり、立ち止まったりしている。

 去年の佐賀インターナショナルバルーンフェスタの写真を眺めると、1年前とは思えないくらい、なつかしい気持ちがする。

 もう一度あんな、朝が生まれるような瞬間を見たいと思う。そのころには、会いたい人に会えない日々は去って、マスクをはずして思いきり笑い合えるといい。

 「紙風船」という黒田三郎の詩がふと胸に浮かぶ。

 

 

落ちてきたら

今度は

もっと高く

もっともっと高く

何度でも

打ち上げよう

 

美しい

願いごとのように

 

 

 そんな心やさしい詩を重ねながら、空を見上げてみる。どこまでも高く、澄んだ青。ゆったりと風に乗って、バルーンがどこかに見えやしないか、息を詰めて目をこらす。

 美しい願いごとのように。

佐賀新聞論説委員長 桑原昇

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