総務省は菅政権の目玉政策である携帯電話料金値下げに向けたアクションプラン(行動計画)を公表した。海外に比べて割高な料金が下がることを期待したいが、民間の企業活動に政府が介入することには疑問も残る。競争環境を整備し、市場の自由競争に委ねるのが本筋ではないか。

 計画の柱は、携帯大手が格安スマートフォン会社に貸す回線の使用料を3年間で5割引き下げる目標や、携帯会社を乗り換えてもメールアドレスをそのまま使える仕組みの検討、オンライン上で契約者情報を書き換える「eSIM」の導入の促進などだ。乗り換えの利益や手続きを分かりやすく説明するサイトの年内開設も打ち出した。

 総務省は、格安スマホ会社を大手と対抗できる存在に育て、より魅力的な料金プランを提案できるように支援するとともに、携帯会社乗り換えへの利用者の抵抗感を軽減することにより、携帯各社の競争を促し、料金引き下げを実現する道筋を描いている。

 日本の携帯電話市場は、NTTドコモとKDDI(au)、ソフトバンクの大手3社が契約数のシェアの9割近くを占める寡占状態が続いている。4月には楽天モバイルが本格サービスを開始したものの、この構図に大きな変化はなく、これが国内の携帯料金が世界的に見て高止まりしている要因といわれる。

 事実、総務省が3月時点でロンドンやパリ、ソウルなど世界6都市を対象に実施した調査では、20ギガバイトの大容量プランで東京が最も高額だった。

 今回の行動計画は、この現状にしびれを切らした政府が、民間企業の価格政策に圧力をかけた形だ。携帯大手各社には不本意な面もあるかもしれないが、計画に沿って事業の見直しに努め、価格競争の拡大から料金の引き下げにつなげるよう望みたい。割高な料金に対する利用者の不満に応えてほしい。

 重要なのは、携帯会社の乗り換えが容易にできる環境の整備だ。今回盛り込まれたeSIMが導入されると、契約者情報を記録したSIMカードを差し替える手間がなくなる。総務省は電話番号を変えずに乗り換えができる「番号持ち運び」制度の手数料3千円も、インターネット手続きでは無料とする方針を決めており、乗り換えの活発化を期待したい。

 携帯料金では、複雑な料金体系もしばしば問題にされる。なじみのない専門用語が多い上に、キャンペーンによる割引などがあり、どれが割安なのか判断に苦しむ。総務省は専門用語を解説し、比較を助けるサイトをつくるという。携帯各社には、分かりやすい料金体系の構築に努力するよう求めたい。

 携帯料金値下げが国民に大きな恩恵となるのは間違いない。だが、携帯料金に法的規制はなく、政府に料金水準を決定したり指導したりする権限はない。政府は今回の計画で、事業者間の競争促進を建前としているとはいえ、事細かに料金値下げの方向付けをした。やむを得ない面もあったが、こうしたやり方が行き過ぎれば、市場経済をゆがめかねない。

 携帯市場への新規参入を促し、活発な競争を実現することにより、料金低下を目指すべきではなかったか。今後、長期的には公正な競争を促進する政策を基本とするよう望みたい。(共同通信・柳沼勇弥)

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