大分市で駅の無人化を進めるJR九州に対し、車いすを利用している同市内の障害者が「移動の自由を侵害された」として9月、損害賠償を求めて同社を提訴した。高齢化が進む中、車いす利用は障害者だけの問題ではない。「誰もが一人で自由に安全に、移動できる交通社会」の構築が問われている。企業任せにせず、地域住民も身近な問題として考えたい。

 2000年11月の「交通バリアフリー法」施行から20年になる。この年は介護保険制度が始まった年でもあり、高齢者福祉の在り方が多方面から論議されたように思う。だが、20年たった現在の状況はどうか。介護の社会化はある程度進んだと思うが、交通問題は「費用対効果」の観点からか、バリアフリー化をはじめ、十分には改善していない気がする。

 移動には大都市や国同士を結ぶ「長距離移動」、中核都市を結ぶ「都市間移動」、通勤、通学などの「都市内移動」がある。長距離移動と都市間移動は有人駅が多いと思われるため、予約やサポートの依頼などある程度の準備ができるだろう。

 問題は日常の都市内移動。車いす利用者が一人で、移動しようと思い立った場合、タクシーは使えるにしても、バスや列車は利便性が高まったようには思えない。

 現実問題として、最寄りのバス停や駅から自宅までの「ラスト1キロ」に困っている人が多いのではないだろうか。健常者にとっての1キロは近距離でも、高齢者や障害者には長距離になる。交通バリアフリー法の施行後「ノンステップバス」は増えたが、全ての車両がそうではない。また、車いす利用者が安全に待機できるバス停も、そう多くはない。

 ハード面のバリアフリーが十分でない場合、補うのは「心のバリアフリー」。障害者に限らず、健常者でも、病気やけがで移動が難しくなることはある。そんな時、「ちょっとした手助け」で問題が解決することは多い。

 障害者や高齢者が自由に移動できるようにするためには、手助けが全く不要なくらいバリアフリーを徹底するか、「ちょっとした手助け」でカバーするしかないだろう。その一策として「有償ボランティア」が考えられる。

 鉄道や駅は、地域住民にとっても愛着がある施設。経営効率化で無人化を進める前に、「駅のサポーター」など有償ボランティアを募集してはどうだろうか。「ちょっとした手助け」をやってもらえば障害者も安心して利用できる。

 今後は移動通信システム技術の発展で、自動運転の車も普及するだろう。未来の交通体系を想像した時、例えば都市内移動では、バスターミナルを市内のいくつかに設置し、その間は自動運転のバスで移動。到着後、ジャンボタクシーを相乗りして自宅や目的地に向かう方法が考えられる。ただ、その場合も昇降機で簡単に乗降できるようにするなど何らかのサポートが必要だ。

 声を上げなかっただけで、これまでも駅の無人化で外出を諦めた障害者がいたかもしれない。「小さな声」に耳を貸さない社会は悲しい。有償ボランティアを配置しなくても、困っている人を見たらみんなで手助けする社会をつくっていきたい。(中島義彦)

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