巨大IT企業の過度な節税を防ぐ国際的な「デジタル課税」の交渉について、経済協力開発機構(OECD)は合意の目標を年内から2021年半ばに先送りした。巨大IT企業を抱える米国と、課税強化を求める欧州などとの対立が続いているためだ。各国・地域は早期の合意に向けて歩み寄る必要がある。

 交渉を主導するOECDは、合意の期限を約半年延長しても、デジタル課税の導入に合意できず貿易紛争が増加した場合、国内総生産(GDP)が世界全体で最大1%押し下げられると警告した。20カ国・地域(G20)財務省・中央銀行総裁会議は、共同声明で合意延期を追認した。

 デジタル課税は「GAFA」と呼ばれるグーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン・コムの米4社など、グローバルな活動をする巨大IT企業への課税を強化する国際的な法人税制だ。企業の拠点がない国・地域でも、売上高に応じて税収が配分される仕組みを目指している。約140カ国・地域が導入について協議を続けてきた。

 しかし当初から、自国の巨大IT企業の税負担増を嫌う米国は、デジタル課税に積極的な欧州各国と鋭く対立。今年に入って交渉が停滞するうちに11月の大統領選が迫り、米国の大きな譲歩が望めなくなった結果、OECDは年内合意の断念に追い込まれた。

 交渉の行方は不透明さを増している。長引く協議に不満な欧州各国はすでに独自のデジタル課税の導入に動いており、これに反発する米国は報復関税などの対抗措置をちらつかせている。フランスは独自の課税を凍結していたが、今回の年内合意見送りを受け、12月に再開する方針を示した。このまま手をこまぬいていれば、交渉が漂流する懸念も否定できない。

 この局面を乗り越えるには、各国・地域が妥協の余地を探るしかない。先頭に立つべきはトランプ米政権である。巨大IT企業へのデジタル課税は時代の要請であり、何らかのルールをつくることは米国にとっても重要だ。交渉の妥結が遠のけば、新型コロナウイルス禍に苦しむ世界経済に追い打ちとなる。責任の重さを自覚してほしい。

 欧州各国には、独自のデジタル課税の実施を留保し、粘り強い姿勢で交渉に臨むよう求めたい。米国との対立激化を招き、交渉が行き詰まってしまっては元も子もない。各国独自の課税は二重課税を発生させる恐れもあり、国際的なデジタル課税が本筋だ。

 GAFAなど巨大IT企業は、新興企業を次々に買収して規模拡大と競争相手の排除を実現し、市場の支配を強めてきた。最近はコロナ禍の巣ごもり需要で業績を拡大し、9月時点でGAFA4社の時価総額は合計5兆ドル(約530兆円)を超える。米下院の小委員会は民主党の主導で、4社による市場支配に警鐘を鳴らし、事業分離など規制強化を提言した。

 デジタル課税構想の出発点は、これほど巨大になったIT企業が各国で得た膨大な利益に応じた適正な税金を納めていない現状への不満である。デジタル課税は市場の独占の排除と並んで、巨大IT企業を統制する政策の両輪と言える。各国・地域に求められるのは、個別の利害を超えて交渉の進展へ足並みをそろえることだ。日本も交渉の場で存在感を高めたい。(共同通信・柳沼勇弥)

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