佐賀大の患者情報共有システムのイメージ

 佐賀大が災害時に備えて九州各県の国立大付属病院と患者情報を共有するため、3億円近くを投じて整備したシステムについて、全く使わないまま運用を断念していたことが7日、関係者への取材で分かった。災害時の医療需要を迅速に把握する目的だったが、各病院との事前の調整が不十分だったとみられる。会計検査院は不適切な支出だと指摘する方針。

 大規模災害では病院が被災したり、地元を離れて避難する住民が出たりするため、医療機関間の情報共有は喫緊の課題。ネットワーク構築の動きは各地で広がっているが、実用性を欠いたことで多額の税金が無駄になった形だ。

 関係者によると、佐賀大のシステムは、各大学病院が患者数や、使用している薬などの情報を共有。災害で従来通っていた病院を受診できなくなった患者が発生した際、受け入れ可能な他県の病院が速やかに対応できるようにする。佐賀大が他大学に呼び掛けて13年にシステムを整備。15年から運用を始める予定だった。

 しかし病名などの表記の形式が、各病院のカルテと佐賀大のシステムとで異なったため、各病院は患者情報をシステムの形式に合わせて入力し直す手間が生じることになった。負担の大きさから十分な協力が得られず、佐賀大は事実上運用を断念した。佐賀大は「現時点ではコメントできない」としている。(共同)

■国主導で整備を

 医療情報の管理に詳しい根東義明・日本大医学部教授の話 災害時に医療機関の垣根を越えて情報を共有することは重要だが、システム改修やメンテナンスなどコストもかかる。一時期、地域で医療情報を共有する動きが活発になったが、予算を長期的に確保できなかったり意思決定主体が曖昧になったりして、頓挫するケースが多かった。各医療機関独自の取り組みには限界があり、国としてのインフラ整備が求められている。

このエントリーをはてなブックマークに追加