「いじめに関心を持ち、自分のこととして考えられる人になってほしい」と生徒に呼び掛ける高木裕己さん=唐津市の唐津西高

■いじめ「自分のこととして」

 唐津市の唐津西高(副島一春校長)で12日、いじめ防止に関する講演会が開かれた。いじめ問題を題材にした映画で本年度の教育映画祭最優秀作品賞を受賞した、同市出身の映画監督・高木裕己さん(64)=東京都在住=が、生徒約580人に「無関心は駄目。いじめを自分の事として考えられる力をつけて」と呼び掛けた。

 高木さんが制作した映画「悩まずアタック!脱・いじめのスパイラル」は、全国中学生人権作文コンテストで法務大臣政務官賞を受賞した山口県の女子中学生の作品がベース。ささいなことがきっかけで、無視されたり、嫌がらせメールを送られるようになった女子中学生が、周囲に打ち明けることで、問題を解決するまでを描いている。

 作品には「いじめる側にはいじめられる側の気持ちがわからない」「誰もが突然双方の立場になりうる」「人間はたくさんの人に支えられている」などのメッセージが込められている。

 作品上映後、高木さんは生徒たちに映画を作ろうと思った経緯を話し、「悩みを抱える人の心に寄り添って」と訴えた。現在はハンセン病問題の映画化に取り組んでいることなども紹介した。

【講演要旨】 悩む人の心に寄り添って

 2011年に大津市で中学生のいじめ自殺事件があった。テレビや新聞は「なぜ自殺したのか」という分析型の報道がほとんどで、「こうしたら解決する」という提案はなかった。それで私は提案型の映画をつくりたいと思った。

 中学生の人権作文コンテストの受賞作に「いじめスパイラル」という作品があった。「悩んだ末に私はこうして解決した」という内容で、ストーリーとして広がりがあると思い、法務局に協力してもらい、本人と保護者に会った。

 その女子中学生は、父親が長距離トラックのドライバーで、その学費のため徹夜で仕事をすることもあった。母親もパートで働いていた。だから親に心配を掛けないようにと、最初は何とか自分で解決しようと思っていたようだ。でも、我慢すると加害者はエスカレートする。その生徒は、誰にも相談できずに深みにはまりこんでいった。

 いじめで一番つらかったことは何かと聞くと、その子は「無視されることが一番つらかった」と答えた。話しながら涙をポロポロと流し、両親も涙を流していた。心の傷は相当深いと実感し、この心の傷を何とか映画化したいとシナリオづくりにあたった。

 毎年、500人もの10代の子どもが自ら命を絶っている。背景はさまざまだが、これは大変なことだ。アンケートによると、子どもたちが何か悩みがあった時に相談する相手は、一番多いのが友達、二番目が家庭で、先生がその次だ。友達がどう相談に乗ってくれるか、悩んでいる時にきちんと応えてあげられる人がいるかどうかは重要だ。

 悩みを抱えている人はみんな頑張っている。そんな人に「頑張れ」と言っても傷つけるだけ。大事なのは聞き上手になること。「本当につらかったね」「私に何かできることがある?」と言うことで、悩みを持つ人は随分救われる。

 いじめ自殺を考える時、みなさんは死という問題を遠ざけるのではなく、命の尊さを学習してもらいたい。悩みを抱える人の心に寄り添い、できるだけ自分の事として考えられる力をつけてほしい。決して無関心ではいけない。

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