新型コロナウイルスの感染拡大に備えたオンライン学習の必要性が高まる中、文部科学省の推進策「GIGAスクール構想」などを活用して、県内も全20市町の公立小中学校で1人1台の学習用端末整備が進められることになった。その一方で、急な導入に対し、現場の教員がその環境を生かせるのか、過剰投資や“宝の持ち腐れ”になりはしないかと準備不足が懸念されている。タブレット型パソコン端末やテレビ会議システムを生かした教育活動に先行して取り組んできた市町もあるが、これからというのがほとんどだろう。導入準備、導入後の検証に力を入れ、有効活用を図ってほしい。

 GIGAスクール構想は全ての小中学生に1人1台のパソコンを整備する計画で、文科省は構想の完了年度を2023年度から20年度に前倒しした。県教委によると、県内も各市町で9月議会までに整備予算を計上した。

 鳥栖市も来年4月から1人1台とする予算を9月議会に出したが、6月議会ではGIGAスクール構想への参加は「考えていない」とし、段階的に導入する考えだった。活用方法の研究や児童生徒に及ぼす影響の検証、職員研修など「必要と考えた準備が十分できていないと認識していた」という。

 しかし7月中旬以降、県内他市町が「GIGAスクール構想に参画する方向に大きく転換した」といい、「県内の情勢変化に遅れを取ってはならない」と判断。導入へ準備を急ぐことにした。

 ただ、方針転換は単なる“横並び”ではなく、教育環境の変化があると強調する。今の教科書には2次元コードが付いており、タブレット型端末をかざすとセミの鳴き声の比較や実験用具の使い方などが動画で学習できる。「1人1台端末」が主流になれば、こうした流れが加速し、未整備の市町の子どもたちは取り残される。

 導入に向け、鳥栖市は現在、市教委と小中学校の現場教員でつくるプロジェクトチームで準備を進めている。「臨時休校時のリモート授業の対応」「平常時の活用法」という2大テーマに加え、提案内容を現場でどう実践するかを話し合うグループも設けた。「1人1台端末」の活用は上意下達型では取り組みが定着・浸透しにくいと予想され、現場ベースで話し合いを進めるのが最も効果的だろう。教材ソフトは運用開始後、必要なものを研究していくというが、導入後に初めて見えてくる部分も多く、現実的な進め方だろう。最初から全てがうまくいくはずがない。試行錯誤しながら長期的な視点に立って改善を続けてほしい。

 8月にあった知事と20市町の首長の意見交換では、市町から教職員の研修やICT支援員の確保への不安が出された。県教委は職員のスキルアップ研修を充実させるといい、バックアップに期待したい。ある鳥栖市議は、ITに詳しい人材を多く確保するため、行政や教職員OBがボランティアで学校をサポートしている事例を紹介し、「先進自治体や成功事例、あるいは失敗事例に学ぼう」と呼び掛けた。事実、それが近道だろう。市町ごとの導入準備や教職員の力量の差で、教育の質に違いを生んではならない。市町や県は有用な情報を共有しながら、「1人1台端末」の時代に合った教育環境づくりに取り組んでほしい。(樋渡光憲)

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