神奈川県座間市で3年前、アパートの一室から女性ら9人の切断遺体が見つかった事件で、強盗強制性交殺人などの罪に問われた白石隆浩被告は東京地裁立川支部の裁判員裁判初公判で起訴内容を全て認めた。ツイッターで自殺願望をつぶやくなどした人を誘い出したとされ、被害者が殺害されることに同意したかどうかが最大の争点となる。

 白石被告は警察の取り調べに「金品目的だった」「本当に死にたい人はいなかった」と供述した。検察側は被害者の生前の言動も踏まえ、同意はなく、所持金や乱暴を目的に凶行に及んだと主張。5カ月にわたる精神鑑定の結果、犯行時の刑事責任能力にも問題はないとして立証を進める。

 弁護側は同意があり、承諾殺人罪が成立するにとどまるとし、責任能力の有無や程度も争う。

 わずか2カ月の間に会員制交流サイト(SNS)で被告と知り合った10~20代の女性8人と男性1人が次々と呼び出されて殺害され、クーラーボックスから遺体の一部が発見された事件は社会に大きな衝撃を与え、再発防止が叫ばれてきた。

 しかし、その後もSNSを介して加害者と結びつき、犯罪に巻き込まれてしまうケースは後を絶たない。性被害に遭う未成年も多い。SNSの闇を払い、悲劇の芽を摘むことができるか。座間事件の裁判を機に改めて課題を整理し、社会全体で向き合う必要がある。

 白石被告は2017年10月に逮捕され、9人殺害をあっさり認めた。「金品目的だった」「楽して生活したかった」と供述。18年3月までに計10回逮捕され、その後、5カ月の鑑定留置を経て同年9月、17年8月から10月にかけ女性8人に乱暴した上、男性1人を加えた9人を殺害、所持金を奪ったとして起訴された。

 SNS上で自殺願望の投稿を見つけると、「死にたい人を手伝っている」「俺自身も自殺志願者」などと伝えて頻繁に連絡を取り、おびき出したとされる。本当に自殺するつもりはなくても、誰かに悩みを聞いてほしいという人は多いといわれ、そうした心の隙に巧妙につけ込んだようだ。

 インターネット上の違法・有害情報の通報を受けるインターネット・ホットラインセンターには昨年1年間で、自殺に誘ったり、呼び掛けたりする書き込みを巡り2629件の通報があり、接続業者などに依頼して1758件が削除された。

 だが、そんな中、昨年9月にSNSで自殺志願者を募るような投稿をしていた大学生の男が、これに応じた30代女性を東京・池袋のホテルで殺害。今年9月には群馬県で男女がツイッターを通じ知り合った自殺志願の40代男性を殺害し、キャッシュカードなどを奪った。

 さらに警察庁によると、昨年1年間にSNSをきっかけに性犯罪などの被害に遭った18歳未満は2082人に上り、過去最多を更新。うち中学生は847人と前年より223人も増えた。スマートフォンの普及で被害が低年齢にまで及んでいるとみられ、デートの対価にお金をもらう「パパ活」などの広がりを懸念する声が高まっている。

 座間事件後、警察やSNS事業者、民間団体がネットパトロールを強化し、犯罪につながりそうな投稿者に警告を発するなど手を尽くしているが、これまで積み重ねた対策を巡り不断の検証と見直しが求められよう。(共同通信・堤秀司)

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