セミナーで、菅新政権の特徴や今後の展望を講演する龍崎孝さん=武雄市の武雄温泉森のリゾートホテル

 佐賀新聞社が主催する佐賀西部政経セミナー(18日開催)で、流通経済大教授で元TBS解説委員の龍崎孝氏が「菅新政権の課題と展望」と題して講演した。菅義偉新首相の人柄や政治手法、衆院の解散総選挙の見通しなどを分かりやすく解説した。講演要旨を紹介する。(山本礼史)

 菅首相の特徴は「市議会議員の目線の政治」といえる。市民の目線で物事を見ていて、市議から国政に転じても同じようにやろうとしてきた。有権者の気持ちにはフィットしていて、就任当初の世論調査でも内閣支持率が上昇した。

 実行力や決断力がある一方で、失敗の恐れがあっても突き進む強引さもうかがえる。組閣人事でも「菅流」が表れている。検察・法務のポストに自分がよく理解する人材を配置していて、これは竹下派の手法を受け継いでいるように映る。総裁選で争った岸田文雄氏は党や閣僚のポストから外した。有権者には「たたき上げ」「庶民派」の印象があるが、永田町と霞が関には恐怖の顔を見せる。

 安倍前政権の負の遺産といえる森友・加計(かけ)学園や桜を見る会の問題について、菅氏は「自分には関係ないこと」と思っているのだろう。官房長官の時代には、安倍晋三前首相のプライベートには一切関わろうとしなかった。菅政権ではこの問題がアキレス腱にならないように、市民目線、国民目線の政策を打ち続けるとみられる。

 横浜市議の時代に、市長の信頼を得る中で役所の人事にも関わるようになったといわれてきた。後にその話を聞き、内閣人事局で人事を握ることで力を持つなど、永田町でも同じ流れだと思った。総裁選では「自分の政策に反対する者は異動してもらう」などの発言があった。公言するところに菅氏の特徴が出ていて、そのような手法で組織を引き締めてきた。

 国家観を示すよりも、目の前にある問題を解決するという姿勢も菅流といえる。例えば、外国人労働者の受け入れ拡大の政策は、当面の人手不足の解消につながっているが、移民政策や将来の人口減少に、どのように関わるのかの説明はなかった。

 携帯電話料金の値下げは、経済政策「アベノミクス」の効果が全国津々浦々に行き届かなかったのを補うために打ち出していると考えられる。値下げの恩恵をもたらした場合は、誰も安倍継承政権とは呼ばなくなるだろう。菅氏は政策で国民を味方に引き付け、巧妙に安倍政権からの脱却を図ろうとしている。無派閥で政治基盤が脆弱(ぜいじゃく)だが、高い支持率を維持できれば強くなるだろう。

 衆院の解散・総選挙はどうなるか。菅氏は解散に慎重だといわれているが、「優柔不断は害」と考えていて、手段を選ばずにいつでも打ってくると思う。携帯料金や行政改革、不妊治療への保険適用などを、数カ月の間に何らかの形で見せて、有権者の期待が高まる時期になるだろう。政策の実施に向けてスピード感が出ていて、選挙を戦う環境をしっかり整えようとする菅氏の用意周到さの表れともいえる。

 

<講演を聴いて> 佐賀西信用組合理事長 栢森久さん

 菅新首相をテレビで見て想像する人柄と、実際に接した人たちの印象とは違うんだなと思った。組閣では自分の政権運営を進めていくために狙い通りの人事をしたり、しっかりブレーンをつくったりしている事情も理解でき、会社などの組織と通じていることも感じた。

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