法人を立ち上げ、大規模な経営を行っている上種正博さん。手にしているのは4000枚以上になるという発芽前のキャベツのトレー=鳥栖市曽根崎町の倉庫

 ■2013年、若者3人で始めた珍しい法人組織。耕し手のない水田を引き受け、米麦や野菜を栽培している。地区で担い手をつくろうという話が発端だったが、協議が十分まとまらないまま“見切り発車”でスタートした。

 初年度は8ヘクタールだけ。機械も人もいない、ないない尽くしの状態で、何でも自分らの手作業でやり、労働時間も通常の倍と膨大な時間になった。最も困ったのが資金繰り。機械の借り賃、地代とか各種支払いがあり、(前職の)JAを辞めた退職金をつぎ込み、稲刈りのオペレーターや肥料振りなどの「賃仕事」もこなし、何とか捻出した。

 ■農業はどこでも担い手不足。どうにかしないとと誰もが思うが、経済性はじめ多くの壁があり、現状はなかなか変わらない。

 基里は自分が育ったふるさと。そこに、高齢化で耕す人がいないという課題がある。JA職員として、いつも何かできないかとの思いがあったが、あくまで第三者的な立場。自分が直接の担い手になり、どうにかしようと思った。農地が荒れるのを見ていられないという、ちょっとした責任感があった。

 ■年々規模を拡大し、6、7年して軌道に乗った。今の経営は全部で34ヘクタール。米麦14ヘクタールのほかキャベツ12ヘクタール、タマネギ3ヘクタールなど野菜も多く組み合わせ、利益を確保している。毎年の売り上げ目標を立てており、10年目は1億円超える目標だ。

 目標額から作付けを考える。毎年、内容は変えており、ここが経営の肝。幸い、今まで大きな失敗はない。JA職員として農家とJA、両方の立場から見ていたことが生きている。でも、常に正解は分からないので、業者の見極めなど最後の経営判断は“動物的な勘”だ。一人で判断せず、同じJA出身の相棒と相談して決められるのが大きい。

 ■地元の基里地区は農家が60戸ほど。平たん部で条件はいいが、高齢者が大部分となり後継者不足に悩む。県内も今後、平野部の優良な農地でも、どう保全するのか課題になりそうだ。

 われわれも今後、カントリーエレベーターの運営まで引き受ける必要があるだろう。農地保全の解決法の一つは、法人の設立。出荷体制や販売先など諸条件を整備し、給与も払える形をとれば、人が来るのでは。ただ、外形だけ整えても内部の人間が必死に努力しないと経営はすぐ行き詰まる。やはり、地域の人が取り組むのが望ましく、JAなどが第三者的な立場でなく、もう一歩踏み込み、主体的に取り組む必要があるだろう。

 ■既に土地を確保し、近く野菜の集荷場を造る予定。合わせて、まだ未定だが、スムージーなどの加工品とか6次化とか、新しいアイデアで何か仕掛けたいという。

 経営は責任もあるが、あれしよう、これしようと考え、やりがいも大きい。今の時代に農業をしているみんなに感謝したい気持ちでいっぱいだ。農業はやる気次第。地域と関わりを持つことが大事で、地域を巻き込み、少しでも農業に携わる人を増やしたい。

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