コロナ禍の中で交通量が減った今年上半期(1~6月)の全国の交通事故死者数は、記録が残る1956年以降で最少となったが、佐賀県の死者数は5年ぶりに増加に転じ、9月17日までに26人が亡くなっている。目立つのは道路横断中の歩行者が車にはねられる事故だ。秋の交通安全県民運動が21日から30日までの10日間、「守ろう交通ルール 高めよう交通マナー」をスローガンに展開される。ドライバー、歩行者ともに改めて気を引き締める機会としたい。

 新型コロナウイルスは日本の道路事情にも大きく影響した。感染拡大による緊急事態宣言の期間(4月13日~5月14日)は目に見えて車の通行量が減少。国土交通省九州地方整備局によると、4月第4週の国道34号(武雄)の交通量は平日が前年比で2割減、休日には5割まで減ったという。テレワークをはじめ外出自粛がいかに浸透していたかを物語る数字だ。

 交通量の減少によって、今年に入って県内で発生した人身事故件数(速報値)は9月17日現在、2588件で、前年同期比961件の大幅減。これだけ事故が減っているにもかかわらず、死者数は前年から6人増えて26人となっている。

 なぜ佐賀県では死者数が増加したのか。県警は、その要因として、歩行中に高齢者が車にはねられる事故などが昨年を上回るペースで発生していることを挙げる。

 6月までの県内の交通事故死者22人のうち、道路横断中に車にはねられたのは半数の11人。全員が65歳以上の高齢者で、そのうち8人は横断歩道のない道路を横断中の事故だった。

 年をとれば反射神経など身体能力は低下する。事故に遭わないためには、高齢者本人がそれを自覚して注意を払わねばならないことは言うまでもない。加えて、カーナビの普及によって、最近は住宅街の生活道路を抜け道として利用する車が増えている。家族で日ごろから話し合い、外出時には注意を促す習慣をつくることも大切だろう。

 もう一つ、盲点として考えられるのは「車は自分を確認し、止まってくれる」という思い込みだ。

 日本自動車連盟(JAF)は、歩行者が信号機のない横断歩道を渡ろうとしている際に止まる車の割合を調査している。2019年の調査で佐賀県の数値は20・9%。約8割のドライバーが横断歩道上やその近くで道路交通法のルールを守っていなかったことになる。

 道交法は、横断歩道を横断または横断しようとしている歩行者がいる場合、車両は一時停止しなければならないとする。違反すれば「横断歩行者妨害」として道交法違反に問われるのだ。県警は、道路横断中の死亡事故が多いことから、ドライバーに横断歩道手前での減速と歩行者優先を、歩行者には車両通過直前直後の横断の禁止を周知するとともに、取り締まりを強化している。

 車の方向指示器の点灯が遅い、車間距離を取らないなど、県内では運転マナーの向上も問われている。道路は本来、危険な場所であり、運転は危険を伴う行為であることを、ドライバーは肝に銘じたい。(市原康史)

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