安全性の問題が指摘されている新型輸送機オスプレイを佐賀空港に配備する政府の方針が18日、表面化した。集団的自衛権の行使容認に続き、日米の軍事一体化に向けて動きを加速させる安倍政権。「断固反対する」。平和運動に携わる市民団体は怒りをあらわにし、周辺住民には驚きと戸惑いが広がった。

 「まさか。よその県の話だと思ってたのに」。佐賀空港がある佐賀市川副町に住む介護士の女性(34)は一気に顔を曇らせた。開発段階から墜落事故が相次ぎ、専門家から「欠陥機」と指摘されているオスプレイ。ニュースで危険性は聞いたことがあり「子どもは外でよく遊ぶし、万が一落ちるかと思うと心配」と不安を募らせた。

 空港沿岸の有明海は、日本一の生産量を誇るノリ漁場。同町のノリ漁業者の川崎賢朗さん(53)は「ノリの作業中に墜落事故があったらどうなるのか。配備してほしくない」。夜間貨物便の運航後、騒音で目が覚めることもあり、「配備されたら昼夜問わず騒音に悩まされるのではないか」と胸中を吐露した。

 反戦運動に取り組む佐賀市の僧侶藤岡直登さん(62)は「航続距離や装備で相手国に大きな脅威となるオスプレイを配備することで、佐賀が攻撃目標となってしまうのでは」と懸念。今月1日の集団的自衛権の行使容認に続くきな臭い空気に「安倍政権が数の力を背景に、一気に押し進めようとする意図を感じる」と強い危機感を示す。

 政府関係者は今回の方針について、佐賀県側からの打診があったとしている。今年1月に「候補地」として浮上して以来、県に対して反対要請を続けてきた県平和運動センターの柳瀬映二事務局長は「県は、そういう事実は国から聞いていないと文書で回答したが、あれはうそだったのか」と声を震わせる。

 沖縄県では2012年10月、全県民ぐるみで反対運動が巻き起こる中、米軍普天間基地への配備が強行された経緯がある。柳瀬さんは「アジアの友好構築の拠点になってほしい佐賀空港を、軍事的目的で使うことは絶対に許されない。県民の反対の声を結集していく」と話した。(取材班)

県、佐賀市も驚きの声

 政府が佐賀空港に新型輸送機オスプレイの配備を検討していることが明るみになった18日、空港を管理する佐賀県や立地する佐賀市の関係者からは「まだ具体的内容は分からない」「コメントできる段階ではない」など、驚きとともに戸惑いの声が広がった。

 古川康知事はこの日、東京出張でコメントは出さなかった。夕方のニュースで「佐賀空港配備」が報じられた後、関係幹部で対応を協議した。幹部らは「(自衛隊と共用する考えはないとする)地元漁協との覚書もあるのに配備は本当なのか」と驚きの声を漏らす一方で、内容については一様に「副大臣が“表敬訪問”に来るということだけで、具体的なことは分からない」と口を閉ざした。午後9時前に庁舎を後にした牟田香副知事も報道陣に「何も言えない」と答えただけだった。

 22日に古川知事の後に武田良太防衛副大臣と面会する木原奉文県議会議長は「詳しい内容は分からないが、まずは話を聞いてからだ」と述べるにとどめた。

 佐賀市の秀島敏行市長は「九州防衛局長からの電話で『武田防衛副大臣が佐賀空港のことで会って話をしたい』と聞いた。副大臣から正式に話を聞いた上で対応を検討したい」とのコメントを出した。

 佐賀市には17日夕、九州防衛局から面会要請の連絡があり、18日午前8時半すぎ、秀島市長が九州防衛局長からの電話を受け、22日の武田副大臣との会談が決まった。

 佐賀空港の軍事的利用をめぐっては、2010年3月、米軍普天間飛行場移設問題で、秀島市長が佐賀空港への移設案に反対する考えを示し、市議会も「断じて容認しない」とする決議を全会一致で可決している。自民党県連会長で内閣府政務官を務める福岡資麿参院議員は「ニュースで初めて知り驚いた。県民の心情を考え、受け入れるかどうかは慎重に議論すべき」と硬い表情で答えた。

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