「かむ」ということは、基本的には食物を細かく砕き、だ液と混ぜ合わせて飲み込みやすくすることです。かみ砕かれた食物は消化酵素との接触面積が大きくなり、胃腸で消化されやすくなります。それだけ吸収されやすくなり、食べたものを栄養として取り込めるのです。

 消化の働きについて、付け加えておきたいのは、すい臓のことです。すい臓は胃袋のそばにある長さ15センチほどの臓器。ここからはさまざまな消化酵素が分泌され、胃袋のすぐ下の十二指腸へも酵素を送り込んで消化を助けています。すい臓の組織を顕微鏡で調べてみると、だ液腺、すなわちだ液をつくる組織とそっくりです。すい臓のことを「からだのだ液腺」と呼ぶ人がいるほど似ています。当然のことながら、だ液腺とすい臓は連携して消化活動をしています。そしてそのだ液腺の働きは、かめばかむほど盛んになるわけで、かむという行為はすい臓を効率的に働かせるためにも役立っていると考えられます。

 それはともかく、栄養を取ることは生きていくための最も基本的な行動です。どんな人でも栄養を取らなければ生きていけません。その基本的生命活動の出発点ともいえるかむことの大切さは、どんなに強調してもしすぎることはないと思われます。(佐賀市 北村歯科医院 服部信一)

※参考文献 「噛まない人はだめになる」(凰人社)

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