多目的ダムや利水ダムにたまっている水を大雨が予想される際に放流し、雨をせき止める容量を大きくする「事前放流」の実施に向け、水系ごとに河川管理者やダム管理者、自治体などの利水者らが治水協定を結ぶ動きが佐賀県内でも進んでいる。これまでに県内31カ所のダムのうち、25ダムが設置されている水系やエリアで締結が完了した。台風10号は県内にも接近する恐れがあり、関係者は事前放流の実施も視野に警戒を強めている。

 河川を管理する国交省武雄河川事務所や県は3日、治水協定に基づいて各ダム管理者に事前放流の態勢に入るよう呼び掛けた。ダム上流の予測雨量が基準を上回るなどの条件を満たせば、実施を判断する。県河川砂防課の担当者は「適正な運用ができるようにしっかりと気象予測を確認し、準備を進めたい」と話す。

 政府は昨年10月の台風19号(東日本台風)の被害を教訓に、利水ダムでも大雨が降る前に水位を下げ、治水に活用する方針を決定した。今年4月に事前放流の考えや条件をまとめたガイドラインも策定した。全国の1級水系のうち、計955のダムがある99水系で5月末までに準備が整った。

 1級水系に設置された佐賀県内のダムは嘉瀬川、六角川、松浦川、筑後川の4水系に計16カ所ある。嘉瀬川水系にある嘉瀬川ダムは、1750万トンの洪水調節容量がある。最長で大雨の3日前から放流した場合、さらに3257万トンの容量を確保できる計算になる。

 2級水系の協定は、河川管理者の佐賀県を中心に利水者の自治体などと調整を進めている。五つのダムがある伊万里圏域と四つのダムがある杵藤圏域は8月28日付で締結した。それぞれ最大で新たに約200~300万トンの容量が確保できる見込みになった。唐津圏域は6ダム中、利水ダムが5カ所を占める。地元負担で松浦川から水をくみ上げている事情もあり、内容を慎重に検討している。

 事前放流は課題も指摘されており、予想より雨が少なく水位が回復できなかった場合、水不足に陥るリスクがある。線状降水帯の発生など突然の豪雨への対応が難しく、今年7月の豪雨では熊本県の球磨川水系のダムが事前放流できなかった。突発的な豪雨に備え、13カ所の佐賀県営ダムは独自に6月から水位を50センチ~1メートル下げる運用を始めた。県内の農業用ダム6カ所も協定に基づき、8月後半から大雨の予測とは別に、あらかじめ水位を一定程度下げている。(円田浩二)

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