政府は新型コロナウイルス感染症対策パッケージをまとめた。コロナ感染者には原則として入院勧告している感染症法の運用を見直し、病床は重症者に振り向け、軽症・無症状者には自宅やホテルでの療養を徹底する。

 今冬の季節性インフルエンザとの同時流行に備え、病床逼迫ひっぱくを防ぐ狙いだ。だが現場を抱える都道府県は「対応する法的権限が知事になくなる」(大野元裕埼玉県知事)と軽症者らのフォローが減ることによる感染再燃に懸念を強める。政府は軽症者への配慮をなお怠らないようにすべきだ。

 新型コロナは感染症法上、危険度が5段階のうち2番目に高い「2類相当」に位置づけられている。感染者には医療機関への入院を勧告し、従ってもらうのを原則としているが、感染者数の増加に伴い医療機関や保健所の負担が重くなった。

 各都道府県は新型コロナ感染のピークに備えた病床確保計画を策定。それによると、全国の入院患者数が最大2万780人になる推計に対し、確保の見込める病床数は2万7350床だ。症状だけでは見分けがつかないインフルエンザ患者も増えてくれば、都市部を中心にあっという間に病床の逼迫が現実化する。

 コロナ感染者の8割は軽症・無症状のまま治癒し、重症化する人は2割という実態も踏まえれば、限られた医療資源を重症者に集中させる見直しには、一定の合理性がある。

 しかし地方は戸惑う。埼玉県では4月、軽症とされた感染者2人が自宅待機中に容体が悪化し、相次ぎ死亡するケースがあった。これを機に同県は、軽症者を自宅ではなく原則ホテルでの療養に切り替えたが、宿泊を拒否する人が多く苦慮。今回の法的位置づけ見直しで検査や入院費用に自己負担が生じれば、感染者の協力がさらに得られなくなると心配している。

 政府は地方との意思疎通を深め、それぞれの地域事情を吸い上げる態勢づくりを急いでほしい。

 対策強化が目的のパッケージが、逆に感染拡大につながることがあってはならない。そのためには感染者を広く、早くに見つけだし二次感染を止めることが肝要だ。パッケージに盛り込まれた、抗原簡易キットによる1日20万件の検査能力確保を着実に達成すべきだ。

 またパッケージは、開発中のワクチンを来年前半までに全国民へ接種できるだけの数量を確保すると打ち出した。世界中で「争奪戦」の状況にあることから政府は、副作用による健康被害への賠償で製造販売業者に生じる損失を補償する法的措置も講じる。緊急時とはいえ、企業への異例の優遇であり国民への丁寧な説明が必要だ。

 日本は英米2社からそれぞれ1億2千万回分のワクチン供給を受けることで基本合意している。ただ、いずれも実用化の実績がまだない新技術を使っており、安全性や有効性には不確定要素が多い。確保の手は尽くすべきだが、ワクチンへの過大な期待は避けたい。

 新型コロナとインフルエンザの同時流行になれば、双方の患者を受け入れなければならない医療機関は、施設や人員の配置などで難しい対応を迫られる。大都市圏とそれ以外では医療現場の事情も異なるだろう。地域本位の検査、治療態勢が早急に整備できるよう、政府は都道府県との調整に努めてほしい。(共同通信・古口健二)

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