死者・行方不明者が10万5千人余りに上った関東大震災が起きた9月1日は、60年前に「防災の日」となった。地震、台風、津波などへの万全の準備を考え活動するために創設された日だ。

 これまでに政府は、揺れたら台所の火を消し、防災頭巾をかぶって机の下に隠れることなどを呼び掛けてきた。建物の耐震化や、延焼する恐れが強い木造密集市街地の再開発も進められている。

 さらに1995年の阪神大震災を受けて、政府の危機管理体制が整備された。緊急消防援助隊、災害派遣医療チーム(DMAT)など広域に助け合う仕組みも強化されてきたことは、行政の対応として評価できる。

 だが、大津波を伴った東日本大震災、震度7を2回記録した熊本地震、全域停電(ブラックアウト)を引き起こした北海道地震などと、被害はどんどん多様化している。

 水害では今年7月、熊本県南部を流れる球磨川などが氾濫。新型コロナウイルス感染症の流行から避難所では感染防止対策も求められた。氾濫を受け、支流にある川辺川ダム建設について地元県知事が「選択肢の一つだ」と述べ、従来の反対から方針転換をしている。

 地球温暖化による豪雨化の傾向もあって近年、観測史上1位の雨量を記録する地点が続出、毎年にように深刻な水害が起きている。ダムや堤防だけで市街地を守ることの限界が指摘され、流域全体での治水政策への転換が急務と言える。

 これら頻発する地震や水害による災害像の変化に合わせ、国や地方自治体、住民は対策を絶えず点検して進化させることが不可欠である。

 だが、南海トラフ巨大地震や首都直下地震という国難レベルの地震発生が予想されているにもかかわらず、災害対応の司令塔として地方に要望が強い「防災庁」の設置に安倍政権は踏み込まなかった。巨大地震に備えるためにも次の政権は、体制強化について真剣な議論をすべきだ。

 広域で大規模な災害が起きた場合、救助隊が行けない場所も出てくる。防災白書でも「公助の限界」が指摘されてきた。

 阪神大震災の際に生き埋めとなった人や閉じ込められた人のほとんどは、自力で脱出したり、家族や隣人らに助けられたりした。「自助」、近所の人と協力し助け合う「共助」の大切さ、重要性を再確認すべきだ。

 自分たちで命を守るためには、まず居住地域の災害リスクについて地元自治体が公表するハザードマップなどで調べて、近所の人たちと情報を共有したい。

 巨大地震が起きれば、1週間程度の孤立は避けられない。最低限の水や食料は備蓄し、高齢者ら災害弱者がいる世帯は、誰が避難所に連れていくのかなどを決めておくことも必要だ。台風の際には早め早めの行動が被害を最小化することを忘れないでほしい。

 コロナ禍で人口集中の怖さが浮き彫りになった。人口が多い地域では被害が大きくなり、支援が行き届くまで時間がかかる。災害に強くなるためには、過度な集中を避け、リスクの低い地域へ居住を徐々に誘導していくことが自治体の役割だ。

 太陽光発電や蓄電システムを活用し災害時でも電力供給を維持する仕組みなどを整え、災害が起きても素早く立ち直るための力を高めておくことも重要である。(共同通信・諏訪雄三)

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