新型コロナウイルス感染拡大の影響で医療機関の経営悪化が深刻だ。病院はウイルスとの闘いの最前線であり、最後のとりでだ。土台から揺らげば、感染症対策、経済再生いずれもが困難になる。官民を挙げて最優先で病院支援を急ぐべきだ。

 日本病院会などによると、4~6月には全国の病院の6割超が赤字で、中でもコロナ患者を受け入れている病院は8割超が赤字になった。全国自治体病院協議会も、コロナ患者を受け入れる公立病院の9割超が4~5月に前年同期比で収支が悪化したと発表している。

 コロナ患者を診る大病院に限らず、直接対応しない診療所も大きな影響を受けている。日本医師会によると、3~4月に前年同期比で外来受診が減った診療所が9割超。厚生労働省の診療科別まとめでは、5月の小児科受診者がほぼ半減した。

 大病院はコロナ患者受け入れに要員配置を厚くし、通常の入院患者は減らした。集中治療室(ICU)の病床を重症感染者用に一定数空けたほか、院内感染防止のため病床数を減らし、不急の手術を先送りした。一方、一般の人たちはコロナ感染を防ごうと外来受診を控え、特に身近なかかりつけ医である診療所の減収が深刻になった。これらが経営悪化の原因だ。

 さらに問題なのは、本来なら頑張りに十分報いるべき医療関係者の処遇も悪くなっていることだ。7月の日本医労連の調査では、医療機関354のうち約35%が看護師らの今年夏の賞与を昨夏より引き下げると回答。東京都にはいったん支給しないとした医療機関もあり、看護師が退職を希望する状況になった。これではウイルスと闘う現場の士気が保てない。

 国はコロナ対応をした医療従事者に最大20万円の慰労金を支給する。医療機関が受け取る診療報酬については、コロナの重症者の入院料を3倍にし、空き病床による収入減を一部補塡ほてんする。ただ支援策は、コロナ患者を受け入れる大病院に手厚く、町の診療所には届きにくい。診療報酬が医療機関に入るのは一般的には申請の2カ月後と即効性に難があるのも事実だ。

 地方自治体も独自の支援策に乗り出している。奈良県は、原則全国一律の診療報酬を、県内については一定割合で引き上げる特例を検討。東京都はコロナ患者を受け入れた病院の経営安定のため約200億円を確保し、約130の医療機関に重症者数などに応じて配分する。石川、鳥取両県なども医療機関へ協力金を支給する方針だ。

 ふるさと納税の寄付を医療機関支援の財源にする取り組みも始まっており、各自治体は創意工夫を一層進めてほしい。

 民間では、MS&ADホールディングスが、コロナで病院が被った損害を補償する新型保険の販売を発表。三井住友銀行は、コロナに対応する病院などを対象に総額1千億円の融資枠を新設した。こうしたビジネスを通じた病院支援の輪が広がることにも期待したい。

 医療機関は、コロナ感染者を直接診ない診療所も含め、国民の生命、健康を支える社会に不可欠なインフラだ。いったん崩れれば、コロナ禍が去った後も簡単には復旧できない。もちろん経済再生も大事だが、政府は観光支援事業「Go To トラベル」に1兆円を超す予算を投入できるなら、病院支援策をもっと強化できるはずだ。(共同通信・古口健二)

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