タマネギは「血液さらさら」によいとされる。血流改善効果がある「ケルセチン」という物質を含んでいるからだ。外皮に多く含まれるそのケルセチンを抽出し、1953年、高血圧治療薬「ケルチンC」の開発につなげたのが、佐賀市出身の女性化学者黒田チカ(1884~1968年)だ◆黒田は1913年、初めて女性に門戸を開いた東北帝国大学(現東北大)に進んだ。帝大初の女性合格者は黒田を含めて3人。当時は9月入学で、東北大は今年、合格発表日だったきょう8月21日を「女子大生の日」として正式に登録した◆黒田はその後、英国留学も経験し、帰国後は理化学研究所でベニバナの色素の研究を続けた。45歳の時、化学分野では女性初となる理学博士になり、「紅の博士」と呼ばれた◆黒田らの合格から100年余。今や女性の大学進学率は約50%に。とはいえ、さまざまな事情で進学を諦める人もいるだろう。資源が少ない日本では人材こそが最大の資本。価値観、生き方も多様化する中、男女や文、理系の区別なく、誰もが平等に勉学に励める理想の環境をつくりたい◆黒田は「どんなに難しいことでも悲観せず、勇気と真心で向かうことが最善の道」という言葉を残した。苦境にあっても向学心を忘れないでということだろう。化学分野以外にも通じる教えである。(義)

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