30年くらい前、アルコールの適量は日本酒で2合程度でした。その後、研究が進み、アルコールは少量でも有害であることがわかってきました。心臓血管疾患やがんとの関連性も指摘されています。現在は、日本酒にして1合、ビールなら500ミリリットルが適量と言われています。女性は男性に比べアルコールによって健康に悪影響を受けやすいため、男性の2分の1から3分の1が適当とされています。

 アルコールを毎日飲んでいて、いつもガンマGTPが正常値の何倍も高い、年配の男性がおられました。高血圧や脂質異常があり、病院には定期的に来られているのですが、何とかアルコールを減らすように説得してもうまくいきません。それがある日を境にどんどん血液検査の結果が良くなっていきました。でも、顔の表情はすぐれません。話を聞いてみると、50年以上連れ添った奥様が入院されているとのこと。状態はあまりよくなく、いつ病院から呼ばれるかわからないし、酒を飲む気にもならないということでした。その後、看病の甲斐なく奥様はお亡くなりになられました。私は何と声を掛けてあげて良いかわかりませんでしたが、ねぎらいの言葉を掛け、とにかく話だけはしっかり聞いて支えてあげようと心に決めました。

 その後、その患者さんは少しずつですがお元気になられていきました。それとともにガンマGTPの数字も上がっていきました。しかし、奥様が亡くなったあとは、どうしてもお酒をやめなさいと言う気になれません。普通の生活が続けられていれば、血液検査の少々の異常には目をつぶってあげてもいいのではないか、と思うようになりました。医師として正しいかどうかはわかりませんが、今はお酒のことはやかましく言わずにこの患者さんにずっと寄り添っていこうと思っています。(佐賀大学医学部附属病院 卒後臨床研修センター専任副センター長 江村正)

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