新型コロナウイルスの感染拡大で異例の選挙戦となった米大統領選は11月3日の投票日まで3カ月を切った。経済格差や人種対立など社会の分断が深まり、国際的にも衰退が明らかになるという逆風下の選挙である。

 大統領は難局の米国をまとめ世界でのリーダーシップを再確立するという重大な任務を担う。共和党のトランプ大統領(74)、民主党のバイデン前副大統領(77)の内外政の政策は大きく異なる。選挙終盤に向けて激化しそうな人格攻撃ではなく、真剣な政策論争の末に米国民は賢明な選択をしてほしい。

 トランプ氏はコロナ対策の失政により苦戦している。豊かで医療技術も高い超大国なのに、コロナ禍から抜け出すどころか、経済回復を優先させた結果、再び感染者や死者が急増した。中国や欧州などが第1波の後、感染爆発を抑えているのとは大きな違いだ。

 7月下旬の世論調査では約66%がトランプ氏のコロナ対策を「支持しない」と答えた。高齢者に重症化傾向があるため、保守派高齢者の離反が始まったもようだ。

 第2次大戦後では最悪となる経済の落ち込みを記録、トランプ氏が「史上最高の好景気実現」と誇ってきた業績も消えてしまった。

 一方、バイデン氏は早くからマスクを着用し、トランプ氏の世界保健機関(WHO)脱退通告に反対するなど、科学や国際協調重視を主張する。医療保険制度の拡大も提唱している。ただ効果が即座に表れるような具体策は乏しくトランプ氏の「敵失」を待つ姿勢だ。

 バイデン氏は近く「女性」と予告している副大統領候補を発表して勢いをつける狙いだ。コロナ対策で強まった国民の「トランプ嫌い」を追い風にするが、新鮮さは感じられず、国をけん引する力強さに欠ける。高齢の不安もあり、秋にトランプ氏と直接対決する討論会で精力をアピールできるかが鍵となる。

 内政の焦点である人種対立は、対立をあおり、黒人の伸長に不満を抱く白人層の票を狙うトランプ氏の戦術が、黒人だけでなく若者世代や無党派層の不興を買っている。民主党の方が伝統的に少数派の支持を集める。バイデン氏は人種和解を唱えているが、加えて分断を癒やす斬新な政策を打ち出すべきだろう。

 対外政策では、トランプ氏の「米国第一」に対して、バイデン氏は国際協調への復帰を掲げている。国連との協力や温暖化防止のパリ協定への復帰、イランとの核交渉への意欲を示す。

 また日本を含めた同盟国に多額の防衛負担を要求するトランプ流のスタイルからの決別を語っている。こうした姿勢は歓迎したい。ただ世界への関与に消極的な米世論をどう説得するのか、納得できる説明が足りない。

 外交の最大課題である中国との関係では、米国は人権や国際ルールの順守など原則を主張する一方で対話を模索すべきだろう。両候補は米中「新冷戦」の是非をもっと議論してほしい。

 コロナの感染拡大を警戒して全米で郵便投票が広がる見通しだ。できるだけ多くの国民が投票できる公正な選挙を実施すべきだ。前回2016年の選挙ではロシアによるインターネットを通じた選挙介入もあった。万全の準備の上で米国の漂流に終止符を打つ選挙を期待したい。(共同通信・杉田弘毅)

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