焼き物の手りゅう弾を手にする宮島トミエさん。終戦から約10年後、有田陶器市の処分品コーナーで見つけたという=伊万里市二里町の自宅

成績優秀だった宮島トミエさんの通信表。勤労動員も評価の対象になっている

 〈次の世代へ伝えたい一念でペンをとりました〉。戦後75年となる今年4月、佐賀新聞の投稿欄「ひろば」に、伊万里市の宮島トミエさん(90)の「有田焼の手りゅう弾」と題した文章が掲載された。つづられていたのは、戦時中の過酷な体験と平和への思い。「ひろば」への投稿は初めてだった宮島さんに、書き切れなかった思いをあらためて語ってもらった。

■指先、今も変形

 宮島さんが有田で陶磁器の手りゅう弾を作ったのは太平洋戦争末期。当時は戦争の長期化で金属が不足し、陶磁器を代用品として武器や貨幣などが作られた。14歳だった宮島さんは自宅近くの工場に動員され、半年余り成形の仕事をした。来る日も来る日も右手の人差し指で穴を空ける作業を続け、指先は今も変形したままだ。

 終戦間際の7月31日、有田の中心部に敵機が襲来、宮島さんは機銃掃射を受けた。腰と両足に被弾して戸板に乗せられ病院まで運ばれた。「我慢せろよー」と励まされながら麻酔なしで治療を受けた時の、焼け火箸でえぐられるような痛みは忘れられない。

 もう一つ、心に刻まれた光景がある。母親が引くリヤカーに乗って通院していると、有田の小さな病院にも長崎原爆の被爆者が次々と運ばれてきた。トラックの荷台から玄関先に、荷物のように降ろされていた。ひどいやけどで、ぼろぼろの服は体液のようなもので染まり、うめき声を上げていた。駅でも苦しむ被爆者たちを見た。

■自由に表現を

 宮島さんは短歌をたしなみ、本紙の読者文芸欄には度々掲載されている。〈B二九足つらぬかれ弾あとの六十余年痛む朝あり〉のように、戦争体験に材を取ったものもある。

 〈一枚の紙にて征きし吾子のあり一片の紙にて人生閉じぬ〉は駅で出征兵士を見送った記憶をもとにした。兵士の母の心情を詠んでいるが、当時の宮島さんは悲しみをこらえきれない母や妻の姿を見ると「日本の女は強くなくてはならないのに、弱みを見せてみっともない」と思っていた。

 先生や大人の言うことをよく聞き、戦争に勝つために何事にも率先して取り組む「優等生」だった。

 戦後、小学校の教師になった宮島さんは「上から押しつけるのではなく、自由に自分を表現できる子どもに育てよう」と心に決めて教壇に立った。時には自身の傷痕を見せながら、戦争の怖さや愚かさ、平和の尊さを折に触れて伝えてきた。

■自分と重ね

 55歳で退職した後は、子どもに戦争体験を話すことはなかった。講話の依頼を受けても断ってきたが、一昨年と昨年、有田中の先生に「生徒の周りに戦争体験を聞かせてくれる人がいないので」と説得されて話した。生徒の祖父母も戦後生まれになった。

 久しぶりに子どもたちの前に立った時、戦時中に同じ年頃だった自分と重ね、平和であることのありがたさで胸がいっぱいになったという。「つらかった、きつかった、ひもじかったと言っても、鎌倉時代あたりの話を聞いてるような顔をして、あまりぴんとこなかったみたい」だが、戦争のない時代がいつまでも続いてほしいと願っている。(青木宏文)

 

「ひろば」面に掲載された「有田焼の手りゅう弾」

 国民学校高等科の14歳の時、有田の陶器工場で手りゅう弾製造に関わりました。9月から3月の卒業まで、厳寒の冬に冷たい陶土はつらいものでした。発火点のある方を受け持った右手の爪は、今でも変形したままです。 

 4月、教師になる夢を抱いていた私は、佐賀師範予科に入学しました。帰省中の7月31日、有田空襲に見舞われました。両腰、両足に被弾し、急いで井戸へ行って流れ出る血を洗いました。

 2カ月ほど学校を欠席した後、自分で治療しながら寮へ戻りました。その夏に終戦を迎えましたが、師範学校は大変でした。黒く塗りつぶした教科書、全寮制の生活、食糧難、電灯制限、等々、寮の私の所へ母は、入手が困難だった乗車券を求めて、部屋の10人分の握り飯を持って来てくれました。

 ある時、当時は食糧統制下だったので県庁裏で警官に捕まり、取り調べられた母は荷物を全部並べて「娘が空腹だ」と涙ながらに訴えたそうです。

 師範も大学になり受験し、卒業、就職。私は「教え子には経験させてはならない、歴史として伝えるべき平和のありがたさ」を語り聞かせ続けました。

 退職後は機会を捉えては、アジア各国への「慰霊と歴史を知る旅」を20回以上重ねてきました。ジャングルの中に建てられた碑に、20歳前後で戦没したと記されていました。若き人たちの夢を奪った戦争。そう思うと涙なくしては読めませんでした。

 私の経験した一端をここに記すことで、平和がいかに大切で素晴らしいことか、次の世代へ伝えたい一念でペンをとりました。

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