完形に近い製品(下)と同種の小片(上)

 骨董品という方がなじみ深かそうだが、いわゆる陶磁器の伝世品の鑑定も、テレビ番組の影響などもあり、一般的にもかなりイメージしやすくなったようだ。ただし、コンコンと指ではじくのが決まり事かのように、やたらとたたこうとする方を見掛けるが、ひび割れの有無はともかく、残念ながら何も分からないので無駄である。

 発掘調査を業務としていると、出土陶片の鑑別は日常茶飯である。伝世品と陶片では、鑑定の勘どころが多少異なるものの、基本的には同じである。ただし、陶片の場合は全体の一部しか残っておらず、中には小指の先ほどの小片から、器種や器形、文様、生産年代などの識別を要することも珍しくない。

 胎土、釉調、文様など、どこでそれを見分けるのか不思議そうに尋ねられることもあるが、実はそんな個別ではなく、もっと総体的に判別しているのである。そう記すと何だか秘技でもありそうだが、実は“直感”が大きい。ただし、その中身が重要で、決して当てずっぽうという意味ではない。

 一つの製品は、視点を変えると、無数の技術・技法の集合体である。つまり、その無数の要素を、頭の中で瞬時に類例と比較しているのである。それは破片であっても、それがどの形や文様の一部であるか参照することにより、頭の中で完器の姿を描くことも可能である。身もふたもないが、つまり、“直感”が働くようになるまで、ひたすら熟練が必要なのである。(有田町教育委員会学芸員・村上伸之)

このエントリーをはてなブックマークに追加