佐賀県内の市町が小中学校でのオンライン学習の準備を急いでいる。新型コロナウイルスの感染拡大による休校に備え、学校と家庭を結ぶオンライン授業をできるようにする意味合いが大きいが、全員分の学習用端末整備や通信環境整備、先生のスキル(能力)アップなど課題も多い。オンライン授業にとどまらず、ICT(情報通信技術)教育を充実する契機にしたい。

 学習用端末を1人1台配備してオンライン学習の環境を整える「GIGAスクール構想」を進める文部科学省は今春、構想の完了年度を2023年度から本年度に前倒しした。新型コロナ対策の国の第2次補正予算も使えるようになり、全国の自治体が端末購入費などを次々に予算化している。

 県内20市町にオンライン授業について聞いた佐賀新聞社の調査では、8市町が本年度中に児童生徒全員への端末配備を終える見通しで、5市町は年度内に授業が実施できると考えていた。5年前に端末配備を終え、8月中に全小中学校でオンライン授業を試行する武雄市をはじめ、県内でも多くの市町に学校と家庭をつなぐ学習環境が整うことになる。

 ただ、実施見通しについて「分からない」が9市町、「予定はない」も2町あった。理由としては、端末が全員分そろわないことや、Wi―Fi(ワイファイ)など通信環境がない家庭があること、先生のスキルアップ、ICT支援員の確保などを挙げた。実施予定の市町も抱えている共通の悩みだ。

 大きな課題になるのが先生のICT教育の能力育成だ。武雄市で試行されたオンライン授業を取材した。先生は理科の実験を手元のカメラで撮影しながら実況し、教室なら板書する部分や問題もあらかじめ用意して、生徒の端末に示していった。全員の解答内容は一覧機能で確認でき、間違いが多い部分はすぐに解説した。1人の生徒の意見を画面上で共有することもできた。教室での授業とはかなり異なっていた。

 先生は利点として、実験を画面でしっかり見せることができる▽問題の正答率や解答の中身がすぐ分かる▽端末に書き込む形は意見が出やすい-などを挙げた。一方、「教室では表情や様子で理解度が確認できるが、オンライン上では難しい」とも指摘。生徒からは「意見を言い合えない」という声も聞かれた。子ども同士の「学び合い」の進め方などへの工夫が必要で、機器の機能を熟知することも欠かせないようだ。

 ICT支援員の確保も課題になる。試行授業では通信環境が不安定なためか、生徒の端末が動かなくなることもあった。そうしたことが頻発すると授業が進まないし、小学校の低学年には機器操作が難しいという声もある。機器の設定やセキュリティー、使用のルールづくりもある。サポートする支援員や教師が必要だ。

 学習用端末の整備はオンライン授業の実施が目的ではない。日常の授業に活用し、分かりやすさや学習への関心を高めることにつなげたい。機器の利点を生かして授業の幅を広げる新たな取り組みが必要になる。不登校対応や家庭学習の充実にも使える。端末整備と同時進行で具体的な活用方法を考え、準備を進めたい。(小野靖久)

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