赤ちゃんが生まれて胎盤が出ると、お母さんの脳下垂体前葉からはプロラクチンという催乳ホルモンが分泌されます。生まれて間もない赤ちゃんが覚醒している時におっぱいを口の近くにもっていくと、吸啜(きゅうてつ)反射で吸いつきます。中には「お腹の中で練習してきたのね~」というくらい上手に顎を動かして飲む子もいます。そんな光景を目にすると、生命誕生の素晴らしさを実感します。

 お母さんたちのおっぱいに対する考え方は実にさまざまで、「完璧に母乳だけで育てる、ミルクは一滴もあげたくない」という人や、「早く仕事に復帰したいから人工栄養でいきます」という人がいます。また、赤ちゃんの体重が増えなくて「母乳が足りないのでは?」と悩む人、ミルクだと免疫力が劣る、愛情が足りないとお姑(しゅうとめ)さんから非難されると悩む人もいます。

 母乳もミルクもそれぞれ良さがあります。難産で母体が疲れていたり、貧血がひどかったりすれば母乳が思うように出ないかもしれません。出る分だけあげればよいのです。

 母乳は分泌物です。毎日、赤ちゃんの栄養に必要な分だけ測ったように出せるとは限りません。皆さんは毎日きっちり1300ミリリットルの尿を出せますか?

 3時間ごとの授乳で断続的な睡眠が2カ月も続けば、誰でも疲弊してきます。1週間に一晩でも誰かにミルクをあげてもらって、ぐっすり眠れば疲れもとれます。

 昔と違って身近に相談できる人がいないお母さんの中には、赤ちゃんが1歳を過ぎても3時間ごとに授乳し、離乳食もおやつも全て口元に持っていって食べさせなければいけないと思っている人がいます。授乳量や回数は足りているのに体重が増えていない赤ちゃんがいて、不思議に思ってよく聞けば、2倍に薄めたミルクを飲ませていたということもありました。

 「授乳しなければ」「赤ちゃんの体重を増やさなければ」と心配せず、母乳でもミルクでも母子の時間を楽しんで授乳をしましょう。限りあるひとときをいとおしんで…。(伊万里市 内山産婦人科副院長、県産婦人科医会理事 内山倫子)

このエントリーをはてなブックマークに追加