曳山巡行の中止を発表した(右から)曳山取締会の山内啓慈総取締、唐津神社の戸川忠俊宮司、氏子総代の辻幸徳氏=唐津市南城内の唐津神社

唐津くんちの曳山巡行の中止を決定した経緯や理由を説明した山内啓慈総取締=唐津市の唐津神社

 200年の歴史を誇る祭りが、初めて中止を余儀なくされた。新型コロナウイルスの影響で、11月の曳山巡行の取りやめが6日に発表された「唐津くんち」。感染の全国的な拡大で、曳山を曳けない事態を予想していた関係者もいたが、収束を願って心待ちにしていた唐津っ子も多く、落胆の色は濃かった。

 「曳き子はもちろん、見物客の健康を考えるとやむを得ない」。唐津神社で午後7時半から会見に臨んだ関係者の一人、氏子総代の辻幸徳さん(71)は神妙な面持ちで巡行の中止を受け止めた。自身も参加する神事には「感染対策を万全にして臨み、いち早いコロナの収束を祈願したい」と言葉をつないだ。

 31年ぶりに保存・修復が進む水主町の13番曳山「鯱」。正取締の吉富大悟さん(52)は「新しい姿をくんちで見てもらいたかったが」と残念がる。9月に修復が終わり、10月中旬にはお披露目式を予定していたが「式典そのものを考え直さないといけない」。

 中町の囃はや子し方かたを務める予定だった唐津商高3年の平山達也さんは、市外への進学を目指しており「囃子方ができるのは今年が最後で、楽しみにしていたのに」と肩を落とした。米屋町の曳き子として参加してきた別の3年生男子も「卒業したら唐津を離れるから、高校最後のくんちのはずだった。神社に向かって曳くにぎやかな光景がないのは悲しい」とこぼした。

 夫が曳山を曳く予定だった京町の小林緑香さん(39)は「お盆や正月ではなく、くんちに合わせて帰省する人が多い。秋の3日間、今年はどう過ごすんだろう。来年はできることを願うばかり」と話す。

 地元経済界では中止の余波を危惧する声が上がった。鳴滝酒造の古館正典社長(51)は「うちのような造り酒屋をはじめ、小売店、旅館、飲食店もきつい」と漏らす。例年なら、本番の1カ月前から会合や打ち合わせが増え、一年で一番の書き入れ時だった。

 御宿「海舟」会長で唐津市旅館協同組合理事長の松下隆義さん(69)は「市の経済的損失は数十億円になるだろう」と語る。くんちの期間は市内の大半の旅館やホテルが予約で満室になるが、キャンセルが相次ぐと推し量る。「まずは関東、関西のお客さんに中止を知らせないと」と、既に対応に追われていた。(成富禎倫、横田千晶)

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